1 静かな空間に、私の靴音が響く。 靴音が大きいんじゃない。ここが、静かすぎるのだ。 あれから…不気味なくらい、私たちはスムーズに地下を進むことができた。 ロケット団員が出てこないどころか、人がいる気配も感じられない。 ラムダさんが何かしたのか、あるいは… 「罠、とか…?」 罠を張るメリット。 この場合いろいろ考えられるけど、第一はやっぱり油断した私たちを襲撃しやすくするため。 でも、そうなるとさっきのラムダさんの言葉とは、つじつまが合わない。 別にラムダさんの言葉を信じてるわけじゃないけど、妙にひっかかる。 それに、ここを仕切っているのがラムダさんだけだという確証もないのだ。 (さっき、ラムダさんがランスさんの格好をしていても、あのロケット団員は不思議に思っていなかった。つまり、複数の人間が仕切っている可能性があるのだ) 「なんかさぁ、」 蒼衣はこちらを振り向く。 「よくわからないよね、ロケット団って」 ランスさんもラムダさんも、何の意図があるのか…それが本心かどうかもわからない。 まあ、ランスさんにいたっては、私が直接聞いたわけじゃないけど。 『でも、少なくとも嘘はついてなかった』 「別にあんたを疑ってるんじゃないよ」 ぽんぽん、と蒼衣の頭を軽く撫でてやると、小さく体をよじらせた。 進化しても、これは相変わらず。 …かと思えば、突然蒼衣は身体をこわばらせ、辺りを見回し始めた。 何か…? 「…蒼衣?」 『近くに、大きな気配がする…、』 そして、間もなくその気配は私にも伝わる。 私は、この気配の持ち主を知っている。 そして、その気配は段々とこちらに近づいてきて、そして。 「君は…、」 突き当たりの曲がり角から現れたその人は、いかりの湖で出会った、マント姿の男だった。 |