6 カツ、と床を踏む硬質な音。 そこに居たのは、 「ら…ランスさん、」 負けたところを見られたのを失態と思ったか、男はうろたえた様子で言った。 そう、忘れもしない…私が最初にロケット団と接触したときにヒワダタウンで出会った人物…ロケット団幹部、ランスさん。 「何ですか、貴方。負けただけでなく、これ以上恥の上塗りするような真似はおよしなさい、みっともない」 「は…!申し訳ありません、ランスさん」 「もういいです、下がりなさい」 「しかし、」 「聞こえなかったんですか?下がりなさい、と言ったんですよ」 「……は、失礼しました」 男はランスさんに向かって一礼をしたあと私を小さく睨みつけ、その場から立ち去った。 「さて…と。お久しぶりですね、と言うべきでしょうか」 そんな男を一瞥して、くるりとランスさんはこちらを向いた。 「さぁ、どうなんでしょうね…できれば私は会いたくありませんでしたけど」 多分私は、露骨に嫌な顔をしてると思う。 しかしランスさんは、そんなこと気にする風でもなくクツクツと笑った。 「何が、おかしいんですか?」 「いやなに。まさかまた会えるとは思ってませんでしたからね」 まったくだ。 その点についてだけは、同意しよう。 「しかし…予想外でしたよ。まさか、カナエちゃん…貴女がこんなにも早くにチョウジまで来るとはね。正直、想定外でした」 「それはどうも……、?」 何かが、引っ掛かった。 何だろう、今の違和感。 今の言葉を頭の中で反復する。 違和感の原因、 「あなた……誰ですか?」 ランスさんと以前会ったときの記憶を掘り起こす。 「カナエさん、覚えておきましょう」 あの時は確かに、ランスさんは私のことをそう呼んだ。 では、私を「カナエちゃん」と呼ぶこの男は誰だろう? 目の前の男は、それはそれは楽しそうに口の端を歪めた。 |