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「くそ!」

だん!と悔し気に男は床を蹴った。
何やらやる気のなかったドガースと、やる気に満ち溢れた蒼衣。
結果は目に見えて明らかで。
……っていうかね、蒼衣くん。あとでちょっとお話しようか。

そんな複雑な心境に駆られつつも、とりあえず私は目の前の男を追い詰める。

「くそくそ!今朝の変な緑の野郎といい…今日は厄日か」

……緑の?
ふと、ある可能性が頭をよぎった、が、とりあえず今は後回しだ。

「それで…私が勝ったんだから、ちゃんと話してくださいね」

男は悔しそうに私を睨み付けて、何か言いたそうにしていた、が、やがて。

「実験、だよ」

口の端を上げて、歪んだ笑いで。
男は、そう言った。

「じっ…けん、」

昨日ロケット団が関わってると聞いて、ある程度覚悟は決めてきたはずだった。
でも、やっぱり関係者から直接その言葉を聞くと、愕然とする。

「そうさ、オレたちはただのポケモンなんて興味がねぇ。珍しいのや強いの、それだけが価値のあるポケモンさ」

個体色が違って強いのなんて最高だろ、と。
そう、言ったのだ。


ぱぁん!


乾いた音が、響き渡った。
何も考えてなんてなかった。気付いたら、身体が動いていた。
打った右手はひりひりと痛む。
でも、傷付けられたポケモンたちはもっと痛い。

「何の…あんたたちに、何の権利があって!」

もっと言ってやりたい。
でも、言葉が出てこない。

「っつー…!テメェ、いきなり何しやがる?!」

ガッと男がつかみ掛かろうと一歩踏み出した、そのとき。

「何をしているんです?」

冷たくよく通る声が、その場に響いた。


私は…この声を知っている。



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