4 カツカツカツ…と、靴音が早足に響く。音はまっすぐこちらに近付いてくる。 隠れるような場所は、ない。 進むか、戻るか。 いきなりの二択を迫られる。 『カナエ、』 蒼衣に緊張が走ったのがわかる。 ……そして、 「何者だ?!」 しまった。 思ったよりも近くにいたようで、あっさりと私たちは見付かってしまった。 私たちの前に現れたのは、よく居るステレオタイプのロケット団員。 ……あれ? この人、どこかで見たことあるような…? この、人を小ばかにしたようなにやにやとした……、 「あ!」 思い出した! 昨日、湖に行く途中のゲートにいた、あの腹立つ警備員! その男は訝し気に眉を潜める。どうやら、昨日会ったことは覚えてないようだ。 (まあ、私としてもその方がいいかもしれない) 「…なんだ、お前?オレのこと知ってるのか?」 「…なんでもないわよ、気にしないで」 やだなぁ、ただでさえロケット団って聞いて嫌な予感しかしなかったのに。 「…?まあいいさ。それよりお前、何しに来やがった?!あのマント野郎の仲間か?!」 マントの……、 やっぱり、あの人はここに来たんだ。 何をしに?目的は? 気になるけれど、どうやらこっちはそれどころじゃなさそうだ。 なにやらごちゃごちゃ言ってた男がボールを構える。 つまり、バトル。 「オレが勝ったらお前のポケモンと有り金置いて帰れよ!」 「私が勝ったら、ここで何が起きてるのか…洗いざらい全部話してよね」 もちろん、こんな人に負ける気なんてしないけど。 ハ!と男は鼻で笑い、そしてボールを放り投げた。繰り出してきたのは、ドガース。 「蒼衣、行ける?」 『大丈夫、任せて』 頷いて、一歩前に出た。 「何だァ、またキルリアかよ」 ぽりぽり頭をかきながら、めんどくさそうに男は言った。 ……って、また? また、ってどういうことだろう? ……と。 ドガースの表情が、強張った。 『げ…?!テメェ、今朝の!』 今朝の? 私が疑問に思っていると、蒼衣はにこりと笑って言った。 『カナエ、指示を』 …何となく、背景に黒いもやもやが見えたのは、気のせいだと思いたい。 |