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カツカツカツ…と、靴音が早足に響く。音はまっすぐこちらに近付いてくる。
隠れるような場所は、ない。
進むか、戻るか。
いきなりの二択を迫られる。

『カナエ、』

蒼衣に緊張が走ったのがわかる。
……そして、


「何者だ?!」

しまった。
思ったよりも近くにいたようで、あっさりと私たちは見付かってしまった。
私たちの前に現れたのは、よく居るステレオタイプのロケット団員。
……あれ?
この人、どこかで見たことあるような…?

この、人を小ばかにしたようなにやにやとした……、


「あ!」

思い出した!
昨日、湖に行く途中のゲートにいた、あの腹立つ警備員!

その男は訝し気に眉を潜める。どうやら、昨日会ったことは覚えてないようだ。
(まあ、私としてもその方がいいかもしれない)

「…なんだ、お前?オレのこと知ってるのか?」

「…なんでもないわよ、気にしないで」

やだなぁ、ただでさえロケット団って聞いて嫌な予感しかしなかったのに。

「…?まあいいさ。それよりお前、何しに来やがった?!あのマント野郎の仲間か?!」

マントの……、
やっぱり、あの人はここに来たんだ。
何をしに?目的は?
気になるけれど、どうやらこっちはそれどころじゃなさそうだ。

なにやらごちゃごちゃ言ってた男がボールを構える。
つまり、バトル。

「オレが勝ったらお前のポケモンと有り金置いて帰れよ!」

「私が勝ったら、ここで何が起きてるのか…洗いざらい全部話してよね」

もちろん、こんな人に負ける気なんてしないけど。
ハ!と男は鼻で笑い、そしてボールを放り投げた。繰り出してきたのは、ドガース。

「蒼衣、行ける?」

『大丈夫、任せて』

頷いて、一歩前に出た。

「何だァ、またキルリアかよ」

ぽりぽり頭をかきながら、めんどくさそうに男は言った。
……って、また?
また、ってどういうことだろう?
……と。
ドガースの表情が、強張った。

『げ…?!テメェ、今朝の!』

今朝の?

私が疑問に思っていると、蒼衣はにこりと笑って言った。

『カナエ、指示を』


…何となく、背景に黒いもやもやが見えたのは、気のせいだと思いたい。


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