3 「誰もいない…?」 店の前にはのぼりが出てたから、営業してるはずなのに。 それどころか、さっきの黒マントの男も見当たらない。 確かに、ここに入ったのに。 一体……、 「あれ?」 それは、巧妙に隠してあったのかもしれない。 でも、そこを隠していたものは少し位置をずらされ、最初にここに来たときにはなかったものが姿を見せていた。 すなわち、地下へと続く階段。 「……明らかに怪しいって、全力で主張してるようなもんだよねぇ」 地下へと続く階段…そして、昨日あのマントの男が言っていた、ロケット団というキーワード。 …嫌な予感しかしない。 でも、 「…、確かめなきゃ」 誰に言われたわけでもない。 それに、面倒事は好きじゃない。 でも、昨日のギャラドスを"造った"という証拠がここにあるというのならば。 私は、それを確かめなきゃいけない。気がする。 大丈夫、何とかなるよ。 自分に言い聞かせるように呟いて、一歩。そして、一歩。 ゆるやかに地下へと続く階段を降りる。 と、私はある違和感を覚えた。 臭いが、しないのだ。 地下特有の、澱んだ埃っぽい空気の臭いが。 …つまり、 「頻繁に、出入りがある…ってこと?」 嫌な予感は、いよいよ確信に近付く。 決定打ではない。 それでも、 「…蒼衣、」 一人の方が潜入には身軽でいいけど、気配を読むのが得意な蒼衣が居てくれた方が何かと心強い。 『カナエ、本当に行くの?』 その声の調子は、あまりこの先に進むことを歓迎してないようで。 「うん…やっぱり、気になるから…、」 『カナエが決めたなら、僕は無理には止めない。まだ、止めるだけの要素がない。でも、』 蒼衣は一度そこで言葉を切り、そして、言った。 『危ないと思ったら、僕はカナエのこと迷わず止めるよ』 それは、確固たる意思を持った言葉。 「でもさ、蒼衣」 蒼衣は少し俯き気味で、表情は読みづらい。 「そうならないためにも、私にはあんたたちが居るんでしょ?なら、多分大丈夫だよ」 私だって、ひとりだったらこんなことしなかった。 でも、私はひとりじゃないから。 『…そうだね』 小さく。 小さくはにかんで、蒼衣は言った。 「よし!進もう、蒼衣」 一歩踏み出した、そのとき。 「誰か居るのか?!」 私のでも蒼衣のでもない第三者の声が、響き渡った。 |