4 『しかし、姫君。これだけは申せます』 結局、今回も何も分かりそうにないと少し落胆したとき、ライコウは言った。 『彼の御方は、貴女のことをとても大切に、何よりも愛おしく思っておられますよ』 それは、とても優しい声色だった。 『…少々、長居しすぎました。姫君、東へ向かうのでしたら、くれぐれもお気をつけて』 そう言い残して、ライコウはあっという間に私たちの前から去っていった。 本当に、一瞬の出来事だった。 「行っちゃった…」 ごう、と風が起こったかと思ったら、ライコウの姿は跡形もなく消えていた。 「なぁ、カナエ。どうするんや?あいつ、なんや意味深なこと言うとったけど」 「どうするったって、そんなの…」 進むしか、ないじゃない。 私には、留まる場所も帰るべき家も、ここにはないんだから。 「まぁ、なんていうかさ」 翡翠が口を開いた。 「何とかなるよ。俺たちだって、いるんだしさ」 何とかなる。 不確定で曖昧な言葉。 それでも、今の私にはそれくらいの方がいいのかもしれない。 ケ・セラ・セラ。 なるようになるさ。 そういえば最近、思いっきり楽しむことを忘れてた気がする。 好きなポケモンたちの世界にきて、思いっきり楽しもうって思ってたのに、最近余裕をなくしてた気がする。 「翡翠の言う通り。カナエ、最近少し力みすぎ」 「そうねぇ…もう少し、楽に行きましょ?」 蒼衣の、垂の言葉に、少し肩の力が抜けた。 今がその時期じゃないなら、待てばいい。 手掛かりなんて、なくて元々だもん。 私は、私が今できることをしよう。 チョウジに何があるかはわからない。 ライコウの言う通り、私にとって辛い選択が待っていたとしても、前に進まないと何も始まらないから。 だから、 「よし、悩んでても仕方ないや!みんな、チョウジへ行こう!」 「ん、そだね。んじゃ、行こうか」 ちゃきちゃきと風音が先頭きって歩き出す。 その背中がなんだか頼もしい。 風音のあとに続いて、私たちはチョウジへ向かって進み始めた。 さっきまで雲行きが怪しかったのに、いつの間にか段々空に光が射していた。 |