2 …と、いうことがあって、アサギシティをあとにした私たちは一度エンジュまで戻り、そして現在、チョウジタウンを目指して東へと足を向けている。 「なんか嫌な天気だよねぇ」 空はうっすら暗く、程なくして雨が降り出しそうな特有の湿り気を帯びている。 夏、梅雨の季節特有の空気だ。 もう少し湿度が上がれば、例の頭痛がやってくるだろうか。 (そう考えてたら少し憂鬱になってきた) 「あーヤダヤダ。こんな日は羽が湿気るから嫌なのよぅ」 「右に同じく。早よこの時期終わらんかな」 湿気が得意でない風音と炬はぶちぶちと文句を垂れる。 ほんとはチョウジまで風音に乗っけてもらえないかな、とか思ったりしたけど、湿気でご機嫌ナナメなようなのでやめた。 それに、歩くのは嫌いじゃない。 「俺さ、雨は嫌いじゃないけど、この空気は苦手ー」 そう言って翡翠が頭の後ろで手を組んだ。 「あら、翡翠くん。腕のところ、ほつれてるわ」 「え、マジ?!どこ?!」 「ううん、そこじゃなくって、」 そう言ってなぎが翡翠の腕に触れた、瞬間。 ばちっと、一際大きな静電気が起こった。 「いってぇ!」 「あ、ごめんなさい翡翠くん!」 「や…いいって、なぎ悪気ないの知ってるし」 苦笑して翡翠は渚楽に言った。 翡翠も成長したもんだなぁ…なんて、感慨にふけっていると、ちょいちょいと袖を引っ張られた。 「どしたの、蒼衣」 「カナエ…なぎの静電気、おかしいのに気付かなかった?」 「おかしいって、何が?」 「なぎがさっき翡翠に触ったのは、服の上から」 「だから、それが――」 何、と言おうとしたところで、気付いた。 セーターでもないのに服の上から触って、あんなに大きな静電気って起こる? 原型のなぎなら有り得るかもしれないけど、今はみんな擬人化をとっている。 辺りをキョロキョロと見回していた蒼衣が、ある一点を見据えた。 「カナエ…来る!」 どぉん…! 雷鳴と共に、それは私たちの前に現れた。 |