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それからの炬は…見ていられなかった。
いや、見たくなかった…のかもしれない。

オコリザルが威張ったのに乗せられて、混乱状態になってしまった炬は、自分自身を痛め付けた。

「もういい、もういいよ炬!戻って!」

私は、傷付く炬を見ていられなくて、ボールへ戻した。
やっぱり、炬を出すべきじゃなかったかもしれない。

「ごめんね、炬」

「お前さんのポケモンは決して弱くない」

静かに、語りかけるように。シジマさんは口を開いた。

「揺らがない精神。あと少しというとき、最後はそれが勝敗を決めるのだ」

シジマさんの言葉が、胸に響く。
揺らがない精神、か。
炬も私も、多分さっきは揺らいでいた。
炬は、自分自身に。
私は、炬の力を信じることを。

だから、私は今度は揺らがない。例え、この子が自信を失っても。
この子の、この子たちの力を信じる。

だからお願い、と。
私が次に出したのは風音。
相性としては悪くない。

「ピジョンか…なるほど、そう来るか!ならオコリザル!地球投げで目を回してやれ!」

『また女かよ…やりにくいったらないぜ』

風音を見たオコリザルは、やれやれと首を振りながら言った。
そして、それを聞いた風音がイラついた気配が伝わってきた。

「風音、急上昇!そのまま空から狙って翼で打つ!」

私の指示と共に、風音はつかみ掛かろうとするオコリザルの腕をすり抜けて一気にジムの天井辺りまで上昇して、数回羽ばたいて狙いをつける。

そして、

『女だからってナメてんじゃないわよぅ!』

大きく広げた翼を使って渾身の力での攻撃を受けたオコリザルは、炬とのバトルのダメージもあったおかげか、場外へ飛ばされて目を回していた。

『アタシたち女だって、やるときゃやるのよ』

ふん、と羽ばたきながら風音は地上へ戻ってきた。

「お疲れ様、風音。でも、もうちょっと…がんばって」

まだ、あと1匹。
シジマさんのポケモンが残っている。



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