3 「かーがりー?」 そういえば、前に…なぎが仲間になったときも、風音を探してキキョウシティを走り回ったこともあったっけ。 ふと、そんなことを思い出した。 もうすぐタンバに着く。 なるべく早く探さないと…。 談話室を出て、近くの部屋や物影など、炬の隠れられそうな場所を探す、と。 「あ、」 積み荷の間から、ぴょこんと見えてる、朱色のふさふさ。 「炬、みーつけた」 びく、としっぽが一瞬震えたが、動こうとしない。 バレバレだよー、炬。 「よいしょ、」 えい、と向こうを向いたままの炬を捕まえて、こっちを向かせる。 向こうを向いてた炬は当然逃げられるわけもなくじたばたとしたが、やがてすぐに大人しくなった。 「ね、炬。私は蒼衣みたいに炬の気持ちが完全にわかるわけじゃないからさ。話してくれないと、わかんないよ」 炬を抱えてしばらく向かい合っていると、気まずそうに視線を泳がせ、そして。 『…なぁ、姉ちゃん』 ぽつり、と。 口を開いた。 『こないだ、マントに炎の石、もろたんやろ?あれ、あたしに使ってくれんか?』 マント…は、ミナキさんのことだろう。多分。 つまり、 「炬は、進化したいの?」 ひたり、と炬の目を見て聞くと、炬は頷いた。 …でも、 「ね、炬。どうして、炬は進化したいと思ったの?」 しばらく炬と私の睨み合いが続いた…が、 『…、……』 「…え?」 『垂に、勝ちたいから』 小さな声だけど。 炬は、はっきりと言った。 「そっか…でもね、炬。それなら、私は炬を進化させてあげることはできないよ」 確かに、炬は進化したら垂よりも強くなるかもしれない。 でも、垂はもう私たちの仲間だから。 過ぎた力は、仲間を傷つけるだけだから。 「ね、炬。今、炬は垂に対して意地を張ってるだけでしょう?だから、炬が本当に進化したいって思うときがきたら…そのときは、私は止めないよ」 ピンポン、と船のアナウンスがタンバへの到着を告げた。 「さ、炬。とりあえず行こっか」 『…ん』 炬を抱えて皆のところに戻ると、 「おかえり、カナエ。垂はもう、大丈夫」 と、蒼衣が迎えてくれた。 |