3 私たちがアサギで出会ったパウワウとの不思議な出来事をかい摘まんで話しているとき。 もぞ、とアカリちゃんが動く気配がした。 「アカリちゃん…?」 ミカンさんが不安げに振り向くと、もそっとアカリちゃんが起き上がる。 「アカリちゃん、まだ寝てなきゃだめよ!」 するとアカリちゃんは、ふるふると首を横に振った。 『だーいじょうぶ!むしろずっと寝てたから体がなまっちゃうくらいだわ』 アカリちゃんの様子を見て、彼女が言いたいことが伝わったのか。 ミカンさんは心配そうにしながらも、アカリちゃんを制止する手を止めた。 『あんたがわざわざ薬をもらってきてくれたんだってね、ありがと。ミカンはこの通り、あたしにべったりだからさ』 苦笑混じりにアカリちゃんは言った。どうやら、姐御肌な性格らしい。 「ううん、どういたしまして!」 答えて、はっと気が付いた。 ミカンさんが不思議そうに首を傾げている。 「カナエさん、今…?」 「あ、えっと…!何となく、アカリちゃんがありがとうって言った気がしたから、」 すると、ミカンさんは柔らかく微笑んだ。 「そうね、私からも改めてお礼を言うわ。…本当にありがとう、カナエさん」 ほろほろと。 ミカンさんは、目を潤ませる。 『あーもう。ほらミカン、泣くんじゃないよ。ほら、あたしはこんなに元気だろ?』 そう言ってアカリちゃんはミカンさんの背中をぽんぽんとあやすように叩き、そして。 「アカリちゃん…?」 ぴかぴかと、優しい明かりでライトルームは満たされた。 もちろん、それはアカリちゃんが。 『…ねぇ、カナエちゃん』 ずっとアカリちゃんの様子を見守っていたなぎが、口を開いた。 『私も、アカリさんと一緒に照らしてもいいかしら?』 「私はいいよ。アカリちゃんに聞いておいで」 やがて間もなくアカリちゃんは頷き、なぎも一緒になってアサギの海を照らし出した。 もうすっかり夜だというのに、ライトルームはまるで真昼のような明るさだった。 |