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「ミカンさん!」

ピンポン、とエレベーターの扉が開くと同時に、転がるようにライトルームへ駆け込んだ。

「カナエさん!」

横たわるアカリちゃんに突っ伏していたミカンさんが、弾かれたように振り返った。
相変わらず目の下の隈はひどくて、昨日もあまり寝てないだろうことがすぐわかる。

「ミカンさん、薬、もらってきましたよ」

かばんに大切にしまい込んだ、タンバの薬屋さんからもらった薬をミカンさんに手渡す。

「あ…ありがとうございます!…でも、船も出ていなかったみたいのにどうして…、」

「話はあと!早く、アカリちゃんに薬を飲ませてあげて」

ミカンさんは頷き、薬を持ってアカリちゃんの枕元にしゃがみ込む。

「アカリちゃん、お薬がきたのよ…カナエさんが、もらってきてくれたのよ」

弱々しくアカリちゃんは首を動かしてミカンさんの方へ向ける。
ミカンさんはさらさらとその口に薬を流し込む。
薬が苦いのか、アカリちゃんは一瞬顔をしかめる。
でも、薬を飲んだアカリちゃんをが見守って少しして。

苦しそうだった、アカリちゃんの呼吸が少しずつおだやかなものになっていった。

「よかった…本当に、何てお礼していいか…!カナエさん、改めてありがとうございます」

「いえ、私もアカリちゃんのことが心配だったし…それに、」

ボールからなぎを出してやる。
その表情は、やっと安心したように笑っていて、

「うちのなぎも、ずっとアカリちゃんのことが心配だったみたいなんで」

ね、となぎの方を向くと、嬉しそうに何度も頷いた。

「ありがとう、なぎちゃん」

ミカンさんの初めて見せる笑顔は、春の花みたいに優しい笑顔だった。


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