2 「ミカンさん!」 ピンポン、とエレベーターの扉が開くと同時に、転がるようにライトルームへ駆け込んだ。 「カナエさん!」 横たわるアカリちゃんに突っ伏していたミカンさんが、弾かれたように振り返った。 相変わらず目の下の隈はひどくて、昨日もあまり寝てないだろうことがすぐわかる。 「ミカンさん、薬、もらってきましたよ」 かばんに大切にしまい込んだ、タンバの薬屋さんからもらった薬をミカンさんに手渡す。 「あ…ありがとうございます!…でも、船も出ていなかったみたいのにどうして…、」 「話はあと!早く、アカリちゃんに薬を飲ませてあげて」 ミカンさんは頷き、薬を持ってアカリちゃんの枕元にしゃがみ込む。 「アカリちゃん、お薬がきたのよ…カナエさんが、もらってきてくれたのよ」 弱々しくアカリちゃんは首を動かしてミカンさんの方へ向ける。 ミカンさんはさらさらとその口に薬を流し込む。 薬が苦いのか、アカリちゃんは一瞬顔をしかめる。 でも、薬を飲んだアカリちゃんをが見守って少しして。 苦しそうだった、アカリちゃんの呼吸が少しずつおだやかなものになっていった。 「よかった…本当に、何てお礼していいか…!カナエさん、改めてありがとうございます」 「いえ、私もアカリちゃんのことが心配だったし…それに、」 ボールからなぎを出してやる。 その表情は、やっと安心したように笑っていて、 「うちのなぎも、ずっとアカリちゃんのことが心配だったみたいなんで」 ね、となぎの方を向くと、嬉しそうに何度も頷いた。 「ありがとう、なぎちゃん」 ミカンさんの初めて見せる笑顔は、春の花みたいに優しい笑顔だった。 |