8 ミナキさんが私に握らせてくれたのは、拳大の大きさで少し透明感のある赤い石。 「ミナキさん、これ…、」 「炎の石。ガーディが進化するには必要だろう?僕のポケモンにも、スイクンにも、これは必要ないからね」 「ありがとうございます!…あ、ミナキさんごめんなさい。私、そろそろ行かないと、」 そうだ、私もゆっくりバトルの余韻を楽しんでいる場合じゃない。 早く薬屋さんに向かわないと、 「そういえば、どうして君はわざわざ強風の中タンバに来たんだい?ジムなら明日でもいいだろうに」 立ち止まったままなのもなんなので歩きながら事情を話すと、 「どうしてそれを早く言わないんだ!」 と言われたけれど、だって聞こうとしなかったじゃないですか、と反論する気力もなく、ええまあ、と曖昧に返すしかなかった。 (私は確かに何度も急いでると言った) (世の中なんていうのはそんなものだ) そうこうしているうちに、目的地であるタンバの薬屋さんにつき、店の前で別れた。 「スイクンが立ち去った以上、僕がタンバに居る理由はないからね」 …だ、そうで。 別れ際、遠く水平線を見て、ミナキさんは呟くように言った。 「君がスイクンに認められた理由はわからない…けれど、僕も君のように、スイクンに認められるよう努力しよう」 その目に宿していたのは、確固たる強い意志。 ばさ、とマントを翻し、ミナキさんは私の前から立ち去った。 …最後まで本質的なところを盛大に勘違いしていたけれど。 そのあとすぐに薬を手に入れて、待ちくたびれたパウワウに 『ほんとにアサギに帰ろうかと思ったわ』 と呆れられたものの、パウワウは行きと同じく私たちをアサギへと送ってくれた。 行きとは違って風は穏やかなもので、アサギに着いた頃にはすっかり陽も暮れていた。 急ごう、灯台まで――! |