3 そう。 私がポケモンをプレイしたのは10年程前の金銀まで。 ラルトスなんていうポケモンは、存在しなかった。 だからこそ、ここがポケモンの世界だと気付かなかった。 最初にであったのがラルトスではなく…例えばポッポとかそういうどこにでもいるようなメジャーなポケモンなら。 そうしたら、あるいはもっと早くにここがポケモンの居る世界だと気付いたかもしれない。 「そう、そのラルトス…君がもし異世界から来たというのなら、それに影響されて人の姿になったのかもしれないし…あるいは、そのラルトスが突然変異したのかもしれない。 そこで、この地方でポケモン研究をしているウツギ博士という人物が居るから、博士に会えば何かヒントをもらえるかもしれない。 さっき博士に連絡を取ったから、明日の午前中に迎えが来るはずだよ」 「何から何まで…本当にありがとうございます…!」 「いやいや、困った人を助けるのも俺の仕事だよ」 そう言ってお巡りさん…カイトさんというらしい…は、笑った。 一時はどうなるかとも思ったけれど、とりあえず行くところもできた。 明日、ウツギ博士に会って…ウツギ博士はこの世界でも名の知れた博士だけど…どうなるかはわからない。 けれど、今の私は一人じゃない。 蒼衣が居る。 カイトさんが居る。 力になってくれる人がいるというだけで、現金なものでなんだかわくわくしてきた。 そうだ、どうせならとことん楽しまなくっちゃ! 昔大好きで仕方なかったポケモンたち。 どうしてだかわからないけれど、今、彼らが私の目の前に居る。 せっかくだもん、楽しまなくちゃ損だよね。 くよくよしてたって仕方ない。ポジティブなのは私の取り柄の1つでもあるのだ。 私と蒼衣は交番の奥にある仮眠室に案内され、おやすみ、と言ってカイトさんは勤務に戻った。 仮眠室には、私と蒼衣の二人きり。 ふと隣を見ると、夜も遅いので蒼衣はうつらうつらと眠そうにしていたが、私が起きているからか必死で目を開けようとしていた。 「蒼衣、眠かったら寝てもいいんだよ」 「それは駄目。カナエより先に眠れない」 いやいやと小さく首を振り、呟くように言った。 「そんな無理しなくても、」 「だめ。カナエが寝るまで寝ない」 どうやら蒼衣は一度決めたら退かないらしく、仕方なく私が折れる形になった。 「わかった、私も寝るから一緒に寝よう」 すると蒼衣は小さくはにかみ、 「カナエ、早く寝る。今日は疲れてる」 「そうだね。蒼衣もお疲れさま。おいで」 布団に二人で潜り込み、目を瞑った。 よほど疲れていたのか、隣からすぐに寝息が聞こえ始め、ほどなくして私も意識を手放した。 |