3 「やぁ、カナエ君。久しぶりだね。マツバから聞いたよ、エンジュジム突破おめでとう」 にこり、と人懐こい笑みを浮かべる。 しかし、言葉は私に向けられているけれど、視線は私の後ろにいるスイクンから離さない。 「ありがとうございます。えっと…ミナキさんは、どうしてタンバへ?」 「タンバ…に、用があるわけじゃないんだ。君の、」 と、私の後ろを指し、 「君の後ろに居るスイクン…彼がこちらに向かっている、と聞いてね。急いで追って来たわけさ」 『姫君、』 スイクンは小さく私を呼ぶ。 『あの者が来たので、私は一度去ります。また、いずれ』 そして一度身を屈め、次の瞬間。 海を渡り、あっという間にその姿は見えなくなってしまった。 「不思議だな…君は」 一歩。 ミナキさんが、私に近付く。 「僕は今まで、ずっとスイクンを追い続けてきた。そう、ずっとだ。しかし…スイクンは捕まるどころか、彼は僕を見ようともしない。それなのに、」 また一歩。 距離が縮まる。 「どうして、スイクンは君に興味を示す?僕と君と…何が違う?」 『そら、だって。しつこい男は嫌われんで』 ぽそり、と炬が小さく呟いたのは、どうやらミナキさんには聞こえなかったようだ。 (マツバさんしかり、炬ってエンジュの2人好きじゃないのかな?) (ミナキさんはともかく、私もマツバさんは苦手だけど) 「…あの、ミナキさん。私、急いでるのでそろそろ、」 「そうだ、カナエ君。勝負しよう!君と僕の何が違うか…わかるかもしれない!」 私の言葉を聞いていたのかいなかったのか。 (聞いてなかったんだろうなぁ) ミナキさんはボールを構える。 もう、このまま通してもらえそうにない。 溜息をひとつついて、私もホルダーに手をかけた。 |