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「やぁ、カナエ君。久しぶりだね。マツバから聞いたよ、エンジュジム突破おめでとう」

にこり、と人懐こい笑みを浮かべる。
しかし、言葉は私に向けられているけれど、視線は私の後ろにいるスイクンから離さない。

「ありがとうございます。えっと…ミナキさんは、どうしてタンバへ?」

「タンバ…に、用があるわけじゃないんだ。君の、」

と、私の後ろを指し、

「君の後ろに居るスイクン…彼がこちらに向かっている、と聞いてね。急いで追って来たわけさ」

『姫君、』

スイクンは小さく私を呼ぶ。

『あの者が来たので、私は一度去ります。また、いずれ』

そして一度身を屈め、次の瞬間。
海を渡り、あっという間にその姿は見えなくなってしまった。

「不思議だな…君は」

一歩。
ミナキさんが、私に近付く。

「僕は今まで、ずっとスイクンを追い続けてきた。そう、ずっとだ。しかし…スイクンは捕まるどころか、彼は僕を見ようともしない。それなのに、」

また一歩。
距離が縮まる。

「どうして、スイクンは君に興味を示す?僕と君と…何が違う?」

『そら、だって。しつこい男は嫌われんで』

ぽそり、と炬が小さく呟いたのは、どうやらミナキさんには聞こえなかったようだ。
(マツバさんしかり、炬ってエンジュの2人好きじゃないのかな?)
(ミナキさんはともかく、私もマツバさんは苦手だけど)

「…あの、ミナキさん。私、急いでるのでそろそろ、」

「そうだ、カナエ君。勝負しよう!君と僕の何が違うか…わかるかもしれない!」

私の言葉を聞いていたのかいなかったのか。
(聞いてなかったんだろうなぁ)
ミナキさんはボールを構える。
もう、このまま通してもらえそうにない。

溜息をひとつついて、私もホルダーに手をかけた。


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