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『数年前まで…この海は今よりも綺麗だったわ』

遠くを見るように目を細め、パウワウは言った。

『でも…いつの頃からか、人間は海への、自然への感謝を忘れ…恐れを抱かなくなってしまった』

日進月歩で科学が進歩して生活が豊かに、便利になっていく反面。
かけがえのない、大切なものが代償となることもある、と。

『私はいつも訴えていたわ、この浜辺で。でも…私の声は、彼らには届かない』

貴女を除いてね、と。
一度、そこで私を見た。

『ねぇ、気付いた?この浜辺、よく見たらゴミがたくさん落ちているでしょう?』

彼女の言葉に砂浜を見渡すと、点々と空き缶や袋などが見える。

『私はね、このアサギの海が好き。だから、ここを守りたいって…そう、思うの』

だから、と。
もう一度、瞳に強い意思を宿す。

『海を汚した人間を…私は、許さない』

「…そっか、」

この子がどうしてあんなにも人間を憎んでいたのか…それは、この美しい海を、自然を守りたかったから。

「ありがとう、パウワウ。君と話ができて、よかったと思うよ」

『私も…貴女と話せて、よかった…のかもしれない』

ふふ、と。
パウワウは笑った。

『そういえば、』

彼女は突然、辺りを見回した。
風は依然として強く、海も変わらず荒れている。

『貴女こそ、どうしてここに?もうすぐ高波が来るから…早く街に帰ったらどう?』

そうだ…アカリちゃん。
今もきっと、苦しんでいる、はず。
灯台での出来事をパウワウに話すと、彼女はふと灯台を見上げた。

『私ね、唯一…人間が作ったもののなかで、あの灯台は好きだったのよ』

そうね…と彼女は少し考えたあと。


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