6 『数年前まで…この海は今よりも綺麗だったわ』 遠くを見るように目を細め、パウワウは言った。 『でも…いつの頃からか、人間は海への、自然への感謝を忘れ…恐れを抱かなくなってしまった』 日進月歩で科学が進歩して生活が豊かに、便利になっていく反面。 かけがえのない、大切なものが代償となることもある、と。 『私はいつも訴えていたわ、この浜辺で。でも…私の声は、彼らには届かない』 貴女を除いてね、と。 一度、そこで私を見た。 『ねぇ、気付いた?この浜辺、よく見たらゴミがたくさん落ちているでしょう?』 彼女の言葉に砂浜を見渡すと、点々と空き缶や袋などが見える。 『私はね、このアサギの海が好き。だから、ここを守りたいって…そう、思うの』 だから、と。 もう一度、瞳に強い意思を宿す。 『海を汚した人間を…私は、許さない』 「…そっか、」 この子がどうしてあんなにも人間を憎んでいたのか…それは、この美しい海を、自然を守りたかったから。 「ありがとう、パウワウ。君と話ができて、よかったと思うよ」 『私も…貴女と話せて、よかった…のかもしれない』 ふふ、と。 パウワウは笑った。 『そういえば、』 彼女は突然、辺りを見回した。 風は依然として強く、海も変わらず荒れている。 『貴女こそ、どうしてここに?もうすぐ高波が来るから…早く街に帰ったらどう?』 そうだ…アカリちゃん。 今もきっと、苦しんでいる、はず。 灯台での出来事をパウワウに話すと、彼女はふと灯台を見上げた。 『私ね、唯一…人間が作ったもののなかで、あの灯台は好きだったのよ』 そうね…と彼女は少し考えたあと。 |