3 「うそでしょー」 翌朝。 昨日夜歩きしたせいか少し寝坊したけれど、朝一番の船には間に合うはず、と船着き場へ向かってみると。 "本日強風のためタンバ行き便運休します" 起きたときから嫌な天気だな、とは思っていたけれど。 まさか、船が出ないだなんて。 「どうしよう…」 近くにいる船乗りのお兄さんに聞いてみても「この風だからねぇ」、と苦笑が返ってくるだけだった。 風で海が荒れ始めたせいか、辺りに人影は少ない。 もし誰か水ポケモンを持っている人がいたら便乗させてもらえないかな、なんて考えたけど、こんな大荒れの天気の中、わざわざ波乗りなんてしないだろうし。 (私だって、アカリちゃんのことがなければ遠慮したい) それでも、ポケモンセンターに帰る気分にはなれなくて。 かといって、薬が手に入っていないのにアサギの灯台に行くのも気が引けて。 (それに、アカリちゃんが苦しそうだとなぎも辛そうにするのだ) 結局、行く宛てもなく海沿いを歩いていたら、いつの間にか昨日の浜辺に辿り着いた。 ざあ、と昨日の夜よりも大きな波が、寄せては返す。 「カナエ、凹まないでよぅ」 浜辺に座り込んで、ぼんやり海を眺める私に、風音が言った。 「んー、私は大丈夫なんだけどねぇ」 タンバに行くのが遅れたら、アカリちゃんがその分長く苦しんでしまう…けど、今の私にはタンバに行く術がない。 (風音に乗せてもらえないか聞いてみたけど、やはりゲームとは違ってピジョンの大きさでは人間を乗せて飛ぶのは厳しそうだ) 八方手塞がりで、明日まで待つしかないかなぁ、なんて考えた、そのとき。 ぱしゃり、 水の跳ねる音が、聞こえた。 |