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澄んだ夜の空気に響く声は、少女というには少し大人びたものだった。
私は蒼衣と顔を見合わせ、岩場へと近付いた。
そこには、

「パウワウ…?」

岩場の陰で歌っていたのは、真っ白な体につぶらな瞳のパウワウ。
その姿は、例えるなら人魚。

『あら、貴女人間じゃない。いやだわ、バトルなの?』

ごめんなさい、気分じゃないのよ。そう言ってパウワウは海に帰ろうと踵を返す。

「ま、待って!私たち、バトルしにきたわけじゃないの!」

思わず、パウワウを引き止めてしまった。
しかし、彼女(だろう、間違いなく)を驚かせるには十分だったようで、首を傾げて振り返る。

『貴女…何なの?私の言葉が、解るの?』

「まぁね。それよりも…さっきの歌って、貴女が歌っていたの?」

すごく綺麗な歌だった、と続けるより早く。
彼女は、私の方を睨んだ。

『人間に…、』

「え…?」

『人間なんかにほめてもらったところで、嬉しくも何ともないわ』

ふい、と。
彼女はそのまま海の中へと消えてしまった。

「蒼衣…あの子、」

蒼衣は首を小さく横に振る。

「わからない…ただ、彼女はすごく人間を憎んでる」

なんで、どうして。
答えを聞くべき彼女は既に海の中で、私にはどうしようもなかった。

「…帰ろっか」

もう、日付を跨いだだろうか。
明日も早いし、そろそろ部屋に戻ろう。

蒼衣の手を繋ぎ、私たちはポケモンセンターへ向かった。
真っ暗な中佇むアサギの灯台を見て、そういえば灯台も「塔」みたいだなぁ、なんて。
ぼんやりと、そんなことを考えていた。

月は、雲に隠れて見えなかった。


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