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「はー、食った食った」

爪楊枝で歯をしごきながら炬は…、

「炬ちゃん、口元を隠して…!」

その様子を見たなぎが必死に炬の行動を戒める。
しかし、炬本人はどこ吹く風で。
せっせと歯の間に挟まったものを取るその姿は、紛れも無く小さなおっさんのようだ。
炬の行動にはたまに…いや、しょっちゅうかもしれない…驚かされる。
普通にしてたらかわいいのに、勿体ないなぁ。

「ま、ええやん。気にしたあかんで」

私やなぎの心境を知ってか知らずか、炬はカカと笑いながら言い放った。

食堂から出ると、辺りはかなり暗くなっていて。
これなら灯台もきっと……、

「カナエ、あれ…」

「なに、どうしたの蒼衣」

蒼衣の指すその方角を辿ってみると、今からの目的地の灯台。
――ただし、

「あれ…明かり、点いてない…?」

既に陽も落ちたというのに、灯台の明かりは消えたまま。

「どういうことだろう…?今日は船がでない、とかなのかなぁ?」

せっかく来たのに残念だなぁ、なんて思っていたら、

「それはないと思うよ、カナエちゃん」

やけに翡翠はきっぱりと言い切った。

「どうしてそう言えるの、翡翠?」

「いやさぁ、さっき船乗りの兄ちゃんと話してたら、最近灯台の明かりがないから、船を出したくても出せないって言ってたんだ」

………、

「なんでそういう肝心なことを先に言わないのよ!このお馬鹿!」

私が口を開くよりも更に早く。
風音のお説教が飛んだ。

「いや、俺も何か言い忘れてるなーって思ってたんだけどさ、お腹空いてたからさー……って、ちょっと炬?」

「次それやったら燃やすで、自分」

炬の目はどこまでもマジだった。
サッと顔を青くした翡翠は無言で何度も頷いた。

「と…とにかく、一応行ってみようか?何かあったのかもしれないし、さ!」

このままだと収拾がつきそうになかったので、そう提案すると、やっと翡翠は風音たちから解放された。


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