3 「はー、食った食った」 爪楊枝で歯をしごきながら炬は…、 「炬ちゃん、口元を隠して…!」 その様子を見たなぎが必死に炬の行動を戒める。 しかし、炬本人はどこ吹く風で。 せっせと歯の間に挟まったものを取るその姿は、紛れも無く小さなおっさんのようだ。 炬の行動にはたまに…いや、しょっちゅうかもしれない…驚かされる。 普通にしてたらかわいいのに、勿体ないなぁ。 「ま、ええやん。気にしたあかんで」 私やなぎの心境を知ってか知らずか、炬はカカと笑いながら言い放った。 食堂から出ると、辺りはかなり暗くなっていて。 これなら灯台もきっと……、 「カナエ、あれ…」 「なに、どうしたの蒼衣」 蒼衣の指すその方角を辿ってみると、今からの目的地の灯台。 ――ただし、 「あれ…明かり、点いてない…?」 既に陽も落ちたというのに、灯台の明かりは消えたまま。 「どういうことだろう…?今日は船がでない、とかなのかなぁ?」 せっかく来たのに残念だなぁ、なんて思っていたら、 「それはないと思うよ、カナエちゃん」 やけに翡翠はきっぱりと言い切った。 「どうしてそう言えるの、翡翠?」 「いやさぁ、さっき船乗りの兄ちゃんと話してたら、最近灯台の明かりがないから、船を出したくても出せないって言ってたんだ」 ………、 「なんでそういう肝心なことを先に言わないのよ!このお馬鹿!」 私が口を開くよりも更に早く。 風音のお説教が飛んだ。 「いや、俺も何か言い忘れてるなーって思ってたんだけどさ、お腹空いてたからさー……って、ちょっと炬?」 「次それやったら燃やすで、自分」 炬の目はどこまでもマジだった。 サッと顔を青くした翡翠は無言で何度も頷いた。 「と…とにかく、一応行ってみようか?何かあったのかもしれないし、さ!」 このままだと収拾がつきそうになかったので、そう提案すると、やっと翡翠は風音たちから解放された。 |