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その空間は異様な空気が漂っていた。

「翡翠、もうちょっと落ち着いて食べなさい」

ご飯は逃げないんだから。
育ち盛りでよく食べる翡翠は、現在定食のご飯のお代わり3杯目に突入していた。

「うり(無理)、だって…」

ひょい、と翡翠の向かいから手が伸びた。
その手にはお箸。
迷うことなく翡翠のお皿に乗っている、最後の1個を狙う。
そして、

「んー、この食堂いい仕事するわぁ。このコロッケも外はサクサク中はほっこりで絶品だわね」

最後のコロッケは、風音の口の中へ。

「あー!風音、お前それ俺のコロッケ!返せよ!」

「むーりむり!早い者勝ちよぅ。それに、もう食べてるもんねー」

…私は食堂に入ってから何度目かの溜息をついた。
基本的に翡翠はよく食べるのだが、風音もそれとタメを張るくらい食べるのだ。
現に、今食べている定食のご飯もお代わりの分のはず。
(それでいて、あんなに細いのだから何ともうらやましい限りだ)

「あんたたち、お願いだからもうちょっと落ち着いて食べなさいよー」

既に私の言葉なんて届いていない2人は、尚も争奪戦を繰り広げる。

「あー!ちょっと翡翠、アタシのプチトマト!」

「早い者勝ちなんだろー?」

翡翠の言葉にムッとした風音が翡翠の手からプチトマトを叩き落とし、見事にキャッチしてあっという間に口へと運ぶ。
そして残っていたご飯を一気に掻き込み、

「ごちそーさまでした!」

綺麗に野菜炒め定食(ご飯大盛お代わり付き)を完食した。
もう、見事としか言いようがない。

コロッケを風音に取られた翡翠も、やがてご飯を完食した。

食堂のおじさんはそんな様子を大笑いして見ていて、デザートのプリンを1つずつサービスしてくれた。


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