3


「大変なんだねぇ」

ぼんやりと。
牧場を眺めながら、私は呟いた。

「あのミルタンク、大丈夫かなぁ」

心配そうに、何度もなぎはミルタンクのいた小屋を振り返る。
オレンの実、持ってたらよかったんだけど…残念ながら、かばんに入っていたのはクラボの実とモモンの実だけだった。

さぁっと気持ちいい風が吹き抜ける。
アサギシティはすぐそば。
風に潮の香りが混ざっている。

…と、隣で大きなあくびをしていた炬が、突然鼻をひくひくと動かした。

「…?どしたの、炬」

『いや…なんや、甘酸っぱいような匂いがした気がしたんやけど…?』

匂いを確認するように炬は歩きだし、そして

『こっちや!』

何かを確信したように、突然走り出した。

「え、ちょっと炬?!」

慌てて私は皆を呼んで、先に走り出した炬を追い掛ける。
さすが、この世界で警察犬として活躍しているだけあって、私たちにはわからない匂いを嗅ぎ付けたんだろうか。

ざくざくと草むらを掻き分け、辿り着いたのは牧場の裏手にある小さな木陰。

『ここや』

確かめように鼻を動かし、炬は頷いた。

「ちょっと炬ィ、いきなり走り出して何なのよぅ」

これ、と足元から何かを拾った炬はそれを私たちに見せる。

「オレンの実…?」

それは、牧場からなくなったはずのオレンの実。
でも、どうしてこんなところに。

『そこにおるんはわかってるんやで!早よう面貸しや』

まるっきりヤンキーのような言葉を吐いて、炬は草むらを睨み付ける。

がさ、がさがさ

足元で、何かが動いた。


[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -