2 物心ついた頃から、両親は既にいなかった。 私を育ててくれたのは、母方の祖父母。 お父さんもお母さんも居ないのは子供心に少し不思議で淋しかったけれど、祖父母や叔父さんたちがいたから、実際そこまで淋しかった記憶はない。 それでも、唯一不思議だったのは…私の両親の写真がなかったこと。 お母さんの写真は、昔のものはあったけれど…私が産まれてからのものはほとんどといっていいくらいなかったし、お父さんの写真に至っては1枚もない…どころか、そういえばお父さんの親戚にすら会ったことがなかった。 一度だけ、おばあちゃんに 「どうして?」 って聞いたことがあった。 おばあちゃんは困ったように、少し淋しそうにしていたから…もう聞くのはやめよう、と誓ったのを覚えている。 中学を卒業する少し前に、祖父母は亡くなった。 親戚の家に引き取られるはずだったけど、少し遠い女子校に受かったのをきっかけに、一人暮らしを始めることにした。 新しい生活、新しい友達。 慣れないことは多かったけど、それ以上に忙しくて、すぐに馴染むことはできた。 そんな、ある日。 その日は朝から雨が降っていた。 昔から雨が降ると頭痛に悩まされていた私にとって、雨は好きになれないものだった。 いつもの頭痛薬を切らしてしまったので、買い物に出た、その帰り道。 不思議な鈴の音に誘われるかのように、私は…気が付いたらこの世界にいた。 そして私は…蒼衣と出会い、翡翠と、風音と、なぎと、炬と出会って、ここに居る。 |