1 その夜…私はポケモンセンターの部屋で、マツバさんの言っていた言葉の意味を考えていた。 エンジュに伝わる伝承…そして、マツバさんの一族。 「伝説に導かれし…か」 だとしたら、夢の中やウバメの森…ううん、そもそも私がこの世界に来たときから私を導く、不思議な声。 同じ声のようで、違う声のようで。 あれは、私を導くためのもの…なのかな。 「カナエ、」 窓から遠くに見える鈴の塔を見ていた蒼衣がこちらにやってきた。 進化して、擬人したその姿は前髪がすっきりし、そのくりくりした目がはっきりと見えている。 服もいつの間にかコートを羽織ったようなものに変わっていた。 「さっき言っていた、カナエが異世界から来たっていうこと…僕は少し知っている、けれど、翡翠や他のみんなは詳しく知らない」 そうだ…蒼衣は一番最初にこの世界で出会って、カイトさんに事情を説明するときも一緒だったから、大体のことは知っている…けれど、翡翠たちには話す機会を逃して、ここまで来てしまった。 …ちょうどいい機会だし、話しておいた方がいいかもしれない。 「そうだね。いつかは私も話そうって思ってたし…ちょうどいい機会だから、みんなに知っておいてもらった方がいいかな」 出ておいで、とボールから皆を呼び出すと、それぞれに少し複雑な表情をしていた。 「カナエちゃん。前に言ってた、いつか話すって言ってたこと?」 翡翠の言葉に、私は頷いた。 こうなったら、ついでだし…私のことを全て話してしまおう。 私を見る、それぞれの目を見据えて、私は口を開いた。 それは、すこし長い私のお話。 |