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あれからのバトルは、できれば思い出したくないものの連続だった。
私の後ろを見つめて(もちろん何もいない)手を振るイタコさんや、虚空に向かって話し掛けていた(よっぽどスルーしようかと思った)イタコさんたち。
さすがの炬も少しげんなりしていた。

『なぁ、姉ちゃん』

「どしたの、炬」

『あたし、帰ってもええやろか』

「お願い帰らないで」

帰りたがる炬をマッハで引き止め、歩くこと少々。

「やぁ、カナエちゃん。そろそろ来る頃だと思っていたよ」

奥まったその場所に、マツバさんは居た。

「どうも、マツバさん」

昨日と変わらぬ、真意の読めない笑みを浮かべて佇んでいる。

「ねぇ、カナエちゃん。君には、怖いものってあるかい?」

それは唐突に。
マツバさんは、言った。

「怖いもの…ですか?」

怖いもの。
虫の中でも蜂やムカデなんかは怖いと思うし、風船の割れる音だって怖いと思う。
でも、多分、マツバさんが言いたいのはそんなことじゃなくて。
質問の意味を捉えかねていると、マツバさんは口を開いた。

「例えば、そうだね…うちに来る女の子なんかは、よくゴーストタイプのポケモンが怖いって言うんだ…あんなに茶目っ気があってかわいいのにね」

私はゴーストタイプは…と、言うよりポケモンに嫌いなタイプはいないけれど。

「…質問を変えようか。カナエちゃん、君は…僕が怖い?」

スゥ、とマツバさんの目が細くなる。
全てを見透かすような目。

私は…、私はマツバさんが…怖い?

「……いいえ、」

駄目だ、相手に飲まれたら。

「そう…なら、いいんだ。始めようか」

細めた目を笑みに変え、マツバさんは言った。

バトルが、始まった。


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