3 「マグマラシ!スピードスター!」 シルバーくんが出してきたのは、いきなり切り札であろうマグマラシ。 早々にケリを付けるつもりか…ならば、 「蒼衣、瞑想!」 スゥ、と蒼衣が集中力を高めると、その周りの空気が変わった。 マグマラシの放ったスピードスターは、蒼衣の周りに生まれた斥力に弾かれる。 「いいよ蒼衣、そのまま念力!」 「ちっ…!マグマラシ、火炎車!」 ごう、とマグマラシの炎が強くなり、蒼衣を巻き込む。勢いを殺さずにぐるり、と回転をすると、素早く蒼衣から離れる。 炎と回転とで、蒼衣のダメージが大きい… ふらふらとよろめいているところをみると、体力は僅か。 「くそ…俺が今原型だったら…!」 噛み殺すような翡翠の呟き。 翡翠の気持ちは痛いくらいわかる。 でも…今、シルバーくんの目の前でベイリーフに戻ってもらうわけにはいかない。 ごめんね、翡翠。 「蒼衣、サイコキネシス!」 瞑想で力を高めた状態でのサイコキネシス。 シルバーくんのマグマラシは"見えない何か"に苦しみ、そして 「…っち、使えないやつだ」 …! 倒れたマグマラシを舌打ちながらボールに戻す。 「使えないだなんて、ひどい…」 「ふん、お前には関係ない…行け、ズバット!」 聞く耳持たず。 シルバーくんはゴルバットを繰り出す。 仕方ない…か。 「蒼衣、サイコキネシス!」 「ゴルバット!噛み付く!」 しまった…! 素早さでは蒼衣が圧倒的不利。 先手を取られた上に、効果は抜群…残り少なかった蒼衣の体力が、尽きた。 「お疲れ様、蒼衣…ゆっくり休んでね」 「ふん、馴れ合いか…どいつもこいつも、」 「馴れ合いじゃないよ。私はこの子たちを信じてるし、皆はそれに応えてくれる。信頼…だよ」 そう、皆はいつだって私を信じて助けてくれる。 だから、私もそれに応えるんだ。 「わからないな…信用こそすれ、信頼だと…?」 「そうだね…ポケモンを道具として見てるうちは、わからないかもね。なぎ、お願い!」 『カナエちゃん、私もカナエちゃんを信じてるから』 なぎの言葉に、私は頷いた。 |