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彼はゆっくりこちらに顔を向け…その顔が、訝し気に歪む。
どうやら、私とヨシノで会ったことは覚えていないようだ。
(まあ、その時については私もシルバーくんだと認識していなかったけれど)

「誰だ、お前は…俺に何か用か?」

まだ少し幼さが残るものの、抑揚を殺した冷たい印象の声。
うっわぁ…歳はヒビキくんと同じ頃だろうけど、ヒビキくんと違って全然かわいくない気がする。

「あのさ、きみ…シルバーくん、だよね?」

すると彼は小さく目を見開き驚いたが、すぐにポーカーフェイスに戻る。

「…何なんだ、お前?」

前言撤回。
かわいくない気がする、じゃなくて、かわいくない。

「あのさ…君、ウツギ博士の研究所からポケモン、」

すると彼は「ああ、」と小さく笑った。

「なんだ…つまり、追っ手か。ヒビキと一緒で」

「追っ手…ね。君にとっては、そうかもしれないね」

「お前!ヒノアラシ返せよ!」

じっと我慢していたが、とうとう堪えきれなくなった翡翠が叫んだ。
普段、この子は絶対に怒らない。
それだけに、私には翡翠の怒りが痛いほど伝わってくる。

「…?何なんだ、お前も追っ手か?」

「違う!俺はヒノアラシの…っ!」

多分…友達、と言おうとして、唇を噛んだ。
翡翠は、今は人間の姿だ。

「…?まあいい。どうしても連れ戻したいなら、俺とバトルして勝ってから言えよ!」

言うが早いか、シルバーくんはモンスターボールを放る。
仕方ない…か。

「蒼衣、お願い!」

シルバーくんとの、最初のバトル。
負けるわけにはいかないんだ。
翡翠の、ためにも。


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