2 彼はゆっくりこちらに顔を向け…その顔が、訝し気に歪む。 どうやら、私とヨシノで会ったことは覚えていないようだ。 (まあ、その時については私もシルバーくんだと認識していなかったけれど) 「誰だ、お前は…俺に何か用か?」 まだ少し幼さが残るものの、抑揚を殺した冷たい印象の声。 うっわぁ…歳はヒビキくんと同じ頃だろうけど、ヒビキくんと違って全然かわいくない気がする。 「あのさ、きみ…シルバーくん、だよね?」 すると彼は小さく目を見開き驚いたが、すぐにポーカーフェイスに戻る。 「…何なんだ、お前?」 前言撤回。 かわいくない気がする、じゃなくて、かわいくない。 「あのさ…君、ウツギ博士の研究所からポケモン、」 すると彼は「ああ、」と小さく笑った。 「なんだ…つまり、追っ手か。ヒビキと一緒で」 「追っ手…ね。君にとっては、そうかもしれないね」 「お前!ヒノアラシ返せよ!」 じっと我慢していたが、とうとう堪えきれなくなった翡翠が叫んだ。 普段、この子は絶対に怒らない。 それだけに、私には翡翠の怒りが痛いほど伝わってくる。 「…?何なんだ、お前も追っ手か?」 「違う!俺はヒノアラシの…っ!」 多分…友達、と言おうとして、唇を噛んだ。 翡翠は、今は人間の姿だ。 「…?まあいい。どうしても連れ戻したいなら、俺とバトルして勝ってから言えよ!」 言うが早いか、シルバーくんはモンスターボールを放る。 仕方ない…か。 「蒼衣、お願い!」 シルバーくんとの、最初のバトル。 負けるわけにはいかないんだ。 翡翠の、ためにも。 |