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ギシ…と古びた梯子が軋む。
あまり人の入った形跡のないその場所は、一層埃っぽい空気が溜まっている。

「カナエちゃん、大丈夫?」

先に降りた翡翠に手を取られ、私は梯子から降り立つ。
風音もその後に続く。

「しっかしまあ、辛気臭いところよねぇ」

…うん、とりあえず風音。
君の言う辛気臭いところの主が目の前にいるから、とりあえず慎もうか。

ざく、と一歩踏み出すと、彼等は一斉にこちらを向いた。
これが、伝説のポケモン…
降りてきたはいいけど、どうするか全く考えていなかった。
進むか、戻るか。
一瞬迷った、次の瞬間。

ごう、と風が駆け抜けた。

「…?!」

地下の中央に居た伝説のポケモンたちは、風のようにその場所から掻き消えた。
そして、

『彼岸の姫君…今はまだ、時期ではありませぬ』

『愛しき姫君…いずれまたお会いしましょうぞ』

通り抜け様にライコウ、そしてエンテイの言葉が頭に響き、

『我等が姫君…雷と焔と水は貴女の導べとなりましょう』

最後に、スイクンは一度私の前で跪づくように頭を下げ…ライコウやエンテイの後を追うように、去って行った。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。

目の前の空間からは、既に3匹は消えていた。

「何だったの…今の」

呆然と。
ただ、呆然と彼等の去った方角を見つめるしかできなかった。

ギシ、と背後から音がした。
振り返ると、先程まで上に居たマツバさんとミナキさん。

「カナエちゃん、と言ったね。少し…話をするくらいの時間は大丈夫かな?」

元より今日は1日調査で潰すつもりで来た。
私はマツバさんの言葉に、ゆっくり頷いた。


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