6 ギシ…と古びた梯子が軋む。 あまり人の入った形跡のないその場所は、一層埃っぽい空気が溜まっている。 「カナエちゃん、大丈夫?」 先に降りた翡翠に手を取られ、私は梯子から降り立つ。 風音もその後に続く。 「しっかしまあ、辛気臭いところよねぇ」 …うん、とりあえず風音。 君の言う辛気臭いところの主が目の前にいるから、とりあえず慎もうか。 ざく、と一歩踏み出すと、彼等は一斉にこちらを向いた。 これが、伝説のポケモン… 降りてきたはいいけど、どうするか全く考えていなかった。 進むか、戻るか。 一瞬迷った、次の瞬間。 ごう、と風が駆け抜けた。 「…?!」 地下の中央に居た伝説のポケモンたちは、風のようにその場所から掻き消えた。 そして、 『彼岸の姫君…今はまだ、時期ではありませぬ』 『愛しき姫君…いずれまたお会いしましょうぞ』 通り抜け様にライコウ、そしてエンテイの言葉が頭に響き、 『我等が姫君…雷と焔と水は貴女の導べとなりましょう』 最後に、スイクンは一度私の前で跪づくように頭を下げ…ライコウやエンテイの後を追うように、去って行った。 それは、ほんの一瞬の出来事だった。 目の前の空間からは、既に3匹は消えていた。 「何だったの…今の」 呆然と。 ただ、呆然と彼等の去った方角を見つめるしかできなかった。 ギシ、と背後から音がした。 振り返ると、先程まで上に居たマツバさんとミナキさん。 「カナエちゃん、と言ったね。少し…話をするくらいの時間は大丈夫かな?」 元より今日は1日調査で潰すつもりで来た。 私はマツバさんの言葉に、ゆっくり頷いた。 |