4 焼けた塔―― 何年も昔に、火事で焼け落ちてしまったという、エンジュにあった塔。 今は、その焼け跡が残るのみの場所。 その全貌が失われた今尚、神聖さは失われずにいる焼け跡。 ここに…何かが、 「しっかし、あの人たち…何が目的なんだろな」 頭の後ろで手を組みながら(癖のようだ)、翡翠は言った。 「なんていうか、不思議っていうかさ」 風音もそれに同調する。 「そだね。今は、って言ってたからいつかはわかる…と、思うんだけど…っと」 話をしている間に、いつの間にか焼けた塔についたようで。 今にも崩れ落ちそうな門が、口を開けている。 「なんか…不思議な感じがする」 何かの気配を感じ取ったのか、翡翠がぽつりと呟いた。 風音も、言葉を発さないものの、しきりに辺りを見回している。 「…行こっか」 立ち尽くす2人を促して、塔の中へと足を踏み入れる。 辺りは薄暗く、埃っぽいような、独特の匂いが鼻をつく。 がさがさ、と足元で灰や焦げた木片が音を立てる。 少し進んだ頃、塔の中程にぽっかりと大きな穴が開いていた。 よく見ると、その穴の縁には男性が2人。 どちらも見た感じ、20代前半から半ば程、といったところか。 1人は少し癖のある金髪をヘアーバンドで止め、垂れ目がちな目が特徴的な青年。 もう1人は白いマントに意志の強そうな目をした青年。 2人は床の大穴を覗き込み、何かを見ているようだ。 「…いるぞ!」 「あぁ…本当だ。ミナキ、君はどうする?」 「決まっているだろう、マツバ。もちろん、スイクンと接触するよ」 そう言って白いマントの青年は、そのマントを翻して立ち上がろうとし、 「おや…君は?」 彼と、目が合った。 |