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焼けた塔――

何年も昔に、火事で焼け落ちてしまったという、エンジュにあった塔。
今は、その焼け跡が残るのみの場所。
その全貌が失われた今尚、神聖さは失われずにいる焼け跡。
ここに…何かが、

「しっかし、あの人たち…何が目的なんだろな」

頭の後ろで手を組みながら(癖のようだ)、翡翠は言った。

「なんていうか、不思議っていうかさ」

風音もそれに同調する。

「そだね。今は、って言ってたからいつかはわかる…と、思うんだけど…っと」

話をしている間に、いつの間にか焼けた塔についたようで。
今にも崩れ落ちそうな門が、口を開けている。

「なんか…不思議な感じがする」

何かの気配を感じ取ったのか、翡翠がぽつりと呟いた。
風音も、言葉を発さないものの、しきりに辺りを見回している。

「…行こっか」

立ち尽くす2人を促して、塔の中へと足を踏み入れる。

辺りは薄暗く、埃っぽいような、独特の匂いが鼻をつく。
がさがさ、と足元で灰や焦げた木片が音を立てる。

少し進んだ頃、塔の中程にぽっかりと大きな穴が開いていた。
よく見ると、その穴の縁には男性が2人。
どちらも見た感じ、20代前半から半ば程、といったところか。
1人は少し癖のある金髪をヘアーバンドで止め、垂れ目がちな目が特徴的な青年。
もう1人は白いマントに意志の強そうな目をした青年。

2人は床の大穴を覗き込み、何かを見ているようだ。

「…いるぞ!」

「あぁ…本当だ。ミナキ、君はどうする?」

「決まっているだろう、マツバ。もちろん、スイクンと接触するよ」

そう言って白いマントの青年は、そのマントを翻して立ち上がろうとし、

「おや…君は?」

彼と、目が合った。


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