3 「っち、覚えてやがれ!」 どこかで聞いたような捨て台詞を吐いて、ロケット団員Aは歌舞練場から逃げるように去って行った。 ぱち、ぱち。 と、舞妓さんが微笑みながら近付いてくる。 「流石カナエはん。おおきに」 「いえ…あの、失礼ですけどタマオさんかコウメさん…どっちですか?」 すると、彼女は楽しそうにコロコロと笑いながら言った。 「いややわぁ、そんなに似てますやろか?うちはサツキ言います。あの2人の、妹にあたりますねん」 「…はぁ。サツキさん…妹さん、ですか」 隣で翡翠や風音が「似過ぎだー」と、ひそひそ話している。 数年前、金銀編をプレイしていたときの記憶を掘り起こす。 舞妓さんて、そんなに居たっけ…? …まあ、とにかく。 誰であろうと、何か知ってそうな舞妓さんに接触できたのはラッキーかもしれない。 挨拶もそこそこに、私は本題を切り出した。 「あの…サツキさん、」 「何ですやろ?」 タマオさんやコウメさんとよく似た、しかしよく聞けば少し声色の違う声で、サツキさんは言った。 「前から聞きたかったんですけど…貴女たち、一体何を知っているんですか?」 行く先々で、意味深なことを言って去っていく…その理由や目的は、一体。 すると、サツキさんはきょとん、と私を見つめ、言った。 「あら…お姉さん方から聞いてませんやろか?」 「聞こうとしたんですけど、"今はまだ"って、」 私の言葉を遮るようにサツキさんは首を横に振った。 頭の飾りがシャラシャラと揺れ、鈴のような音を奏でる。 「だから、お姉さん方からそう聞いてはりますのやろ?でしたら、私から言うわけにはいきません」 はっきりと。 サツキさんは、言った。 「まあ、そうどすなぁ…せっかくエンジュに来てくれはったのやし…今の頃やったら、もしかしたら焼けた塔に行ったら何かあるかもしれませんえ?」 独り言のように、私を見ることなくぽつりと言った。 「焼けた塔…ですか?」 「あら。うち、何か言いましたやろか?」 再び視線を私に向け、にこりと笑うサツキさん。 「いえ…何でもない、です」 心の中でサツキさんに感謝をしながら、私はサツキさんの言う、焼けた塔へと足を向けた。 「ほな、カナエはん。縁が"合"ったら、またお会いしましょ」 しゃらり、と音がした。 少し振り返ると、サツキさんは踊りの稽古に戻っていた。 |