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「っち、覚えてやがれ!」

どこかで聞いたような捨て台詞を吐いて、ロケット団員Aは歌舞練場から逃げるように去って行った。
ぱち、ぱち。
と、舞妓さんが微笑みながら近付いてくる。

「流石カナエはん。おおきに」

「いえ…あの、失礼ですけどタマオさんかコウメさん…どっちですか?」

すると、彼女は楽しそうにコロコロと笑いながら言った。

「いややわぁ、そんなに似てますやろか?うちはサツキ言います。あの2人の、妹にあたりますねん」

「…はぁ。サツキさん…妹さん、ですか」

隣で翡翠や風音が「似過ぎだー」と、ひそひそ話している。
数年前、金銀編をプレイしていたときの記憶を掘り起こす。
舞妓さんて、そんなに居たっけ…?
…まあ、とにかく。
誰であろうと、何か知ってそうな舞妓さんに接触できたのはラッキーかもしれない。
挨拶もそこそこに、私は本題を切り出した。

「あの…サツキさん、」

「何ですやろ?」

タマオさんやコウメさんとよく似た、しかしよく聞けば少し声色の違う声で、サツキさんは言った。

「前から聞きたかったんですけど…貴女たち、一体何を知っているんですか?」

行く先々で、意味深なことを言って去っていく…その理由や目的は、一体。
すると、サツキさんはきょとん、と私を見つめ、言った。

「あら…お姉さん方から聞いてませんやろか?」

「聞こうとしたんですけど、"今はまだ"って、」

私の言葉を遮るようにサツキさんは首を横に振った。
頭の飾りがシャラシャラと揺れ、鈴のような音を奏でる。

「だから、お姉さん方からそう聞いてはりますのやろ?でしたら、私から言うわけにはいきません」

はっきりと。
サツキさんは、言った。

「まあ、そうどすなぁ…せっかくエンジュに来てくれはったのやし…今の頃やったら、もしかしたら焼けた塔に行ったら何かあるかもしれませんえ?」

独り言のように、私を見ることなくぽつりと言った。

「焼けた塔…ですか?」

「あら。うち、何か言いましたやろか?」

再び視線を私に向け、にこりと笑うサツキさん。

「いえ…何でもない、です」

心の中でサツキさんに感謝をしながら、私はサツキさんの言う、焼けた塔へと足を向けた。

「ほな、カナエはん。縁が"合"ったら、またお会いしましょ」

しゃらり、と音がした。
少し振り返ると、サツキさんは踊りの稽古に戻っていた。


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