3 誰だろう? 振り向くと、そこには朱色の髪に、仔犬のように人懐っこい目が印象的な女の子。 彼女はニカッと笑い、言った。 「姉ちゃん、探してるんはこれちゃう?」 女の子は、そのかわいい見た目に似合わない口調でそう言った。 (アカネちゃんみたいなイントネーションじゃなくて、こう、もう少し荒っぽい感じ) 彼女が私に差し出したのは、見覚えのあるポーチ。 「あ…うん」 「やっぱりな」 そうやと思った、と頷き彼女は言う。 「ありがとう…でも、」 「なに、いいってことよ」 ぱぁん、と太腿を叩きながら言うその姿は、気前のいいおじさんを連想させる。 どうにも見た目と行動が一致しないのに違和感を覚えた。 「ねぇ、君。どうして、」 「カナエちゃん!」 どうしてこれが私のだってわかったのか聞こうとしたとき、私を呼ぶ声がした。 振り向けば、翡翠を筆頭に4人ともこっちに向かってくる。 「ん、仲間が来たみたいやね。じゃあな、姉ちゃん。もう無くすんじゃねぇぞ」 くるりと背を向け、ひらひら手を降りながら彼女は立ち去った。 同時に、皆が私の元へやって来る。 「カナエ、今の子は?」 彼女が立ち去った方を見ながら風音は言う。 「わかんない、けど…これ、あの子が見付けてくれたんだ」 「あ、ポーチ!」 あの子について私が言えるのは、なんだかすごく変わってる子だったこと。 あと、もうひとつ。 なんだか、あの子…無理してるんじゃないかな、って。 不自然な彼女の話し方に、私は妙な確信を持っていた。 次にあの子と会えるかはわからない。 わからないけど…会えたら、少し話をしてみたい。 そう、思った。 だって、あの子は少し前の私と被って見えたから。 |