2 「うぇー…死ぬかと思った」 「翡翠くん、大丈夫?」 「翡翠、それは大袈裟」 「ばっかねぇ、一気に掻き込むからじゃないの」 「もう、ほっといてよ!」 きゃいきゃいと騒がしい声を背に、落ち着いて今朝からの記憶を手繰る。 朝、コガネシティを出るときに食料と飲み物を買ったから、その時は間違いなくあった。 …ってことは、自然公園でお昼を食べたときか、エンジュの手前でバトルをしたときか。 考えられる可能性はこれくらいで。 「とりあえず、今日はさんぼんぐりの辺りまで探そっか」 「そうね…お財布は心配だけど、暗くなったらカナエちゃんの身の方が心配だわ」 「アタシ夜あんまり動けないしねー」 …と、いうわけで。 私たちはポケモンセンターを出て、エンジュの入口辺りまで戻ってきたんだけど。 「もうだいぶ暗いなぁ…とりあえず、右手の方は翡翠となぎで探して、蒼衣と風音は左。私はまっすぐで、ちょっと探して見付からなかったらここに戻ってくること」 「カナエ一人は危ないよ」 蒼衣が言った。 「あんたたちを一人で行かせる方が心配よ。そんな遅くまでは探さないし、大丈夫よ」 何か言いたそうだったが、渋々蒼衣は頷き、私の指示した方へ風音と共に向かった。 翡翠となぎも、逆の方へ足を進める。 「さぁ…て、と。何であんなもの落とすかなぁ」 落としても気付きそうなもんなんだけどなぁ。 とにかく、悔やんでいても仕方ない。 道なりに続くしげみの影を覗き込む。 それらしいものは見当たらない。 辺りは薄暗く、やっぱり誰かと一緒の方がよかったかなぁ、なんて少し後悔したが、それも今更だ。 屈み続けた腰を伸ばし、一息ついたとき。 「ねぇ、ちょっと」 後ろから、知らない声に呼び止められた。 |