6 土煙が治まったそこには、 「ミルたん!!」 目を回して倒れている、ミルタンク。 つまり、ミルタンク自身の重さと、回転の勢いを逆手にとったのだ。 「お疲れ様、ようがんばってくれたなぁ」 アカネちゃんは優しい声音でそう言って、ミルタンクをボールに戻す。 「…うちの負けやわ。さっきはひどいこと言うてもうてごめんな。うち、悪気はないねん」 アカネちゃんはそう言って右手を差し出す。 「改めて自己紹介するわ。うち、アカネいうねん」 「私こそ、いきなりごめんなさい。私はカナエ」 差し出された右手を、握り返した。 新しい、絆が生まれた瞬間。 「あー、なんかいろいろありすぎて、びっくりして涙も出てこんわ」 「涙?」 「うん。うち、負けたら泣いてまうクセみたいながあるんやけど。いきなり乗り込んでくるし、目の前で進化はするし」 あははは、と私たちはひとしきり笑って、そうだ、とアカネちゃんが言った。 「な、カナエ。気付いた?このジムな、ピッピの形してるねんで」 「うそ!」 何だか複雑だなぁ、とは思ってたけど。 「ホンマやって。ちょっとこっち来てみ」 そう言って、アカネちゃんはジムの上に上がる。 私もそれについていき、上から見下ろす、と。 「わぁ、ほんとだ!かわいい!」 ぐねぐねと複雑だったジムの壁やオブジェは、デフォルメされたピッピの形。 「前にリフォームしたんやけど、誰も気付いてくれへんでなー」 まあ、そりゃなかなか上から物を見る視点がないと、難しいとは思うけど。 「まあ、それはええわ。カナエ、またコガネ来ることがあったら絶対寄ってや!約束やで!」 「うん、またコガネに来たときはよろしくね」 じゃあね、といって私たちはコガネジムをあとにした。 時刻はすっかり夕方。 「翡翠、ポケモンセンターに帰ろうか」 『うん、帰ろう!俺、お腹すいちゃった』 一瞬、違和感があった。 翡翠のセリフを頭の中で反復する。 『…?どうしたの、カナエちゃん』 「いや…翡翠、あんた自分のこと俺って言ったなぁ、って思って」 『あ、これ?変かなぁ?』 「ううん、いいと思うよ」 今の翡翠には似合ってると思うし。 『ねえ、カナエちゃん!それよりも俺お腹空いたんだって!』 もうペコペコ。と翡翠は言う。 「よし、急いで帰ろう!」 ビルに夕日が反射してきらきら輝く街の中、私たちはポケモンセンターへの帰路を急いだ。 |