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土煙が治まったそこには、

「ミルたん!!」

目を回して倒れている、ミルタンク。
つまり、ミルタンク自身の重さと、回転の勢いを逆手にとったのだ。

「お疲れ様、ようがんばってくれたなぁ」

アカネちゃんは優しい声音でそう言って、ミルタンクをボールに戻す。

「…うちの負けやわ。さっきはひどいこと言うてもうてごめんな。うち、悪気はないねん」

アカネちゃんはそう言って右手を差し出す。

「改めて自己紹介するわ。うち、アカネいうねん」

「私こそ、いきなりごめんなさい。私はカナエ」

差し出された右手を、握り返した。
新しい、絆が生まれた瞬間。

「あー、なんかいろいろありすぎて、びっくりして涙も出てこんわ」

「涙?」

「うん。うち、負けたら泣いてまうクセみたいながあるんやけど。いきなり乗り込んでくるし、目の前で進化はするし」

あははは、と私たちはひとしきり笑って、そうだ、とアカネちゃんが言った。

「な、カナエ。気付いた?このジムな、ピッピの形してるねんで」

「うそ!」

何だか複雑だなぁ、とは思ってたけど。

「ホンマやって。ちょっとこっち来てみ」

そう言って、アカネちゃんはジムの上に上がる。
私もそれについていき、上から見下ろす、と。

「わぁ、ほんとだ!かわいい!」

ぐねぐねと複雑だったジムの壁やオブジェは、デフォルメされたピッピの形。

「前にリフォームしたんやけど、誰も気付いてくれへんでなー」

まあ、そりゃなかなか上から物を見る視点がないと、難しいとは思うけど。

「まあ、それはええわ。カナエ、またコガネ来ることがあったら絶対寄ってや!約束やで!」

「うん、またコガネに来たときはよろしくね」

じゃあね、といって私たちはコガネジムをあとにした。
時刻はすっかり夕方。

「翡翠、ポケモンセンターに帰ろうか」

『うん、帰ろう!俺、お腹すいちゃった』

一瞬、違和感があった。
翡翠のセリフを頭の中で反復する。

『…?どうしたの、カナエちゃん』

「いや…翡翠、あんた自分のこと俺って言ったなぁ、って思って」

『あ、これ?変かなぁ?』

「ううん、いいと思うよ」

今の翡翠には似合ってると思うし。

『ねえ、カナエちゃん!それよりも俺お腹空いたんだって!』

もうペコペコ。と翡翠は言う。

「よし、急いで帰ろう!」

ビルに夕日が反射してきらきら輝く街の中、私たちはポケモンセンターへの帰路を急いだ。


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