3 「んっふっふっふー」 ずんずんと足音を立ててコガネジムの中を突き進む。 (ジムトレーナーのお姉さんたちは何故か逃げ腰になってるが、知ったこっちゃない) 『カナエ、怖いよ』 蒼衣が私の半歩後ろを歩きながら、ぽそりと言う。 まあ、なんて失礼な。 「蒼衣ちゃーん、怖いなんていうのはどのお口ー?」 『ご、ごめんカナエ!』 うりうり、と蒼衣の頬っぺたらしき部分を指でつついてやると身体をよじらせた。 まったく、蒼衣ってば。 そんなわけで、ジムトレーナーたちは本気になった私(たち)の相手ではなく、さくさくと奥に進む。 そして、ジムの最奥部。 私の目指す桃色がそこに居た。 彼女は私の方へ視線をやり、そして。 「さっきのイケメンのお兄さんやん!うちを追いかけて来てくれたん?!いやー、うちって罪な女やわぁ」 開口一番、そう言った。 確かにアカネちゃんを追いかけてきたには違いない。間違いではないが、まるでその意味は違う。 「あのねぇ!私は女!誰がお兄さんよ!!」 すると、アカネちゃんは数回瞬きをして私の頭から爪先まで眺めたあと、最後に私の胸元でその視線を止め、言った。 「うそやん、ホンマに女の子?!」 「どこ見て言ってるのよ!だからそう言ってるじゃない!」 「どこって…そら、胸やん」 あっさりと。 アカネちゃんは、そうのたまった。 「いやー、勘忍な、勘忍!うち、ぱっと見で思い込んでまうみたいでなー」 からから、と笑いながらアカネちゃんに、私の中の何かがキレた。 「な、なによ!初対面の人間にそんな失礼なこと言う貴女の方がガサツで男の子みたいじゃないの!」 思わず口から出たのは、そんな言葉で。 するとアカネちゃんも眉を釣り上げ、 「な…何なん自分!うち、ちゃんと謝ったやんか!」 「あんなの謝ったうちに入らないわよ!」 バチバチ、と見えない火花を散らし、そして 「勝負よ!」 「勝負や!」 かくて、コガネジムリーダー、アカネちゃんとのバトルが始まった。 |