2 『誰もいないね』 カナエちゃんは、"この建物"じゃなくって、"この建物にいる人"に会いたかったみたいで、「どうしようかな、奥にいるのかな」と呟いていた。 そういえば、カナエちゃんは冒険初めてなのに、どうしてコガネシティに知ってる人がいるんだろ? 不思議に思ったとき、奥の方から誰かが出て来た。 「はーい、どうしたの?」 出て来たのは、前にキキョウジムで戦ったよりも少し年上くらいのお兄さん。 「カイトさん!」 さっきまで疲れた顔だったのに、その人に会った途端カナエちゃんは元気な顔になって。 カナエちゃんの元気な顔は大好きだけれど、どうしてだろう。 なんでか、少し、もやもやしたんだ。 カナエちゃんと、カイトって呼ばれた人は少し話をしている。 『ねぇ、カナエちゃん。この人誰?』 僕の言葉に気付いたカナエちゃんが僕を抱き上げて、僕たちをお互いに紹介した。 違うんだ、僕はこの人のことが知りたいんじゃなくて、 「どうやら俺は翡翠君に嫌われたみたいだね」 困ったように笑ってお兄さんが言った。 嫌いじゃないんだよ。 ただ、ちょっともやもやするだけ。 「普段はすごくなつっこいんですけど…多分、疲れてるかお腹空いてるんです」 カナエちゃんが的外れなことを言うから振り返ったら、カナエちゃんにも不思議そうな顔をされた。 違うんだ。 疲れてなんかないよ。 お腹もすいてないよ。 ただ、少し もやもやしてるだけ。 この気持ちの名前を、僕はまだ知らない。 お兄さんとの別れ際にカナエちゃんが小さく溜息をついた。 ごめんね、カナエちゃん。 |