6 「あった…!」 同じような建物の並ぶ街を歩き回り、しばらくして。 私はようやく、目的の場所を見付けた。 「失礼しまーす」 がらり、と目的の扉を開く。 中には誰もいない。 …奥かな? ことり、と奥で物音がした。 やっぱり奥に居たんだ。 「はーい、どうしたの?」 奥から出て来たその人は、 「カイトさん!」 今日、カイトさんがここに居る保証なんてなかったけれど。 どうしても、コガネにもう一度来たらカイトさんに挨拶がしたくて、真っ先にコガネの交番にやってきた。 「あ、カナエさん?!」 突然の来訪に、驚きを隠せないカイトさん。 私はどうも、と会釈をし、 「お久しぶりです」 「久しぶり、うまくやってるかい?」 「はい!あれから、手掛かりを見付けるためにジョウトを旅することにしたんです」 そっか、とカイトさんは微笑んだ。 『ねぇ、カナエちゃん。この人誰?』 足元から不思議そうにカイトさんを見上げる翡翠。 心なしか、その声に苛立ちがある気がするのは果たして気のせいなのか。 「ほら、翡翠ー。最初に私を助けてくれた、カイトさんだよー」 ひょい、と翡翠を抱き上げてカイトさんを紹介する。 すると翡翠は『ふーん』と言って、ぷいと横を向いた。 何でこんなに機嫌悪いんだろ…? 「あははは、どうやら俺は翡翠君に嫌われたみたいだね」 苦笑しながらカイトさんは言う。 「いえ、普段はすごくなつっこいんですけど…多分、疲れてるかお腹空いてるんです」 翡翠が少し微妙な顔をしてこっちを見たけど、何も言わずにまた視線を逸らした。 あとで話を聞かなくては。 「おっと…そろそろ夕方のパトロールに行かないと。カナエさん、今晩はポケモンセンターに泊まるのかい? 「はい、そのつもりです」 「送っていくよ。明るくなってきたとはいえ、女の子一人じゃ心配だ」 足元で翡翠が小さく『僕もいるよ』と呟いたのを私は聞き逃さなかったが、何も言わずに小さく溜息をついた。 |