5


「じゃあね、ヒビキくん」

「うん、またそのうち!気をつけて!」

空が茜色に染まり始めた頃。
私たちはヒビキくんのおじいさんの家をあとにした。

あまりダラダラもしていられないのだ。
コガネシティに行くなら、寄りたいところがあるのだから。
気が急くと、少し早足になる。

ふと、気付くと少し見たような景色。
ここは、

「あ、蒼衣と歩いた道だ」

あの時は夜道だったけれど、今はまだ明るい。
歩速を落とし、ゆっくり辺りを見渡す。
あの時は不安でいっぱいだった。
突然知らないところにきて、一人ぼっちで。
でも、ここは私が昔憧れた世界で、今は一人じゃない。
蒼衣が、翡翠が、風音が、なぎが…他にも私の力になってくれる人たちが居る。

『カナエちゃん、どうしたの?』

翡翠が私の顔を見上げて言う。

「ここに来たときのことを思い出してたんだよ」

『ここに、来たとき?』

翡翠は首を傾げる。
そっか、まだちゃんと話したことなかったっけ。

「そ。今度、皆にゆっくり話すよ。…さ、そろそろコガネシティだよ!」

いつの間にか、そこは見覚えのある街の入口で。
きらきらと眩しい、ジョウト一の大都市…コガネシティへ、再び私は足を踏み入れた。

「さて…と、」

せっかくコガネに来たからいろいろ見て回りたいけれど、とりあえず先に行きたいところがある。
私は、朧げな記憶を頼りにその場所へと足を向けた。


[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -