4 「へぇ、そんなことがあったんだ」 私の説明を聞いたヒビキくんの第一声。 ヒビキくんは事情を全部知っているし、問題ないだろうから、覚えてることは全部説明して。 蒼衣は自分の兄弟分と再会したのがうれしいのか、ヒビキくんのラルトス…心太くんと名付けたらしい…と遊んでいる。 (それは"ところてん"って読むんだよ、って言おうかとも思ったけど、やめた) しばらく考え込んでいたヒビキくんが、ふと思い当たったように口を開く。 「カナエさんが会ったっていう舞妓さんは、多分エンジュの舞妓さんじゃないかなぁ…確かあそこ、歌舞練場とかあった気がするし、」 そっか、エンジュシティ…コガネシティの次の街。 確か、あそこには 「エンジュってさ、塔があるのカナエさん知ってる?」 そう。エンジュにある、ふたつの塔。 もっとも…そのうちのひとつは、火事で焼け落ちてしまった、はずだけれど。 「もしかしたらさ、エンジュに行けばわかるかもしれないね」 「そうだね。ありがとう、ヒビキくん」 「いやいや、礼には及ばないって!」 なにそれ、と私たちは同時に吹き出した。 ど、同時に一人で寂しくなったのか翡翠が私の膝の上に飛び乗った。 「どしたの、翡翠ー?」 『蒼衣、心太と遊んでるからつまんない!』 ぷい、と少しふて腐れる。 うーん、このさみしんぼさんめ。 うりうり、と翡翠の頭を撫でたら『何するの』と言いながらも楽しそうにしたから 「ほら、3人で仲良く遊んでおいで」 と促すと、機嫌が直ったのか元気よく蒼衣たちの元へ向かっていった。 『蒼衣、心太!あそぼー!』 『わぁ、翡翠がきたー!』 きゃきゃ、と3人で戯れるのを見て、うっかり「若いなぁ」なんて思ってしまって、いやいや、と首を振った。 まだまだ私は若いのだ。 あの子たちが若すぎる、だけで! |