「あっつい…」
「だらしない」
世は地球温暖化。暑くとも冷房の設定温度を高めにしなければいけない。それならばいっそのこと縁側で過ごしてやろうと言い出したのはなまえだ。しかし暑さには滅法弱いらしく、タンクトップに短パンと、露出の多い格好だ。色気のいの字も無いが。なまえのくわえたままの某有名な水色のアイスがポタポタと溶け出して地面に黒い染みを作った。
「太一、アタリ出た?」
「出んな」
「あああー…。ああ!」
いきなり叫んだと思ったら、ぐしゃっと残りのアイスが下の棒を通って落ちてしまっていた。ずっとくわえているからそうなるんだ。
「あ、あああああああー…」
神童拓人なら涙を浮かべるであろうその瞬間、なまえはがっくりと頭を垂れた。嘆きの声と蝉の鳴き声の大合唱だ。
「あーあ…」
「馬鹿だななまえも」
「そうだね」
地面にじわじわと溶けているアイスをため息をついて残念そうに眺めた。執着心はないようだ。
「まぁいいや。かき氷作る」
と言ってだるそうにゆっくり立ち上がった。人が立ち上がるのをスローモーションで見たらこんな感じなんだろうな。
「ついでに俺も」
「味は?」
「レモンで」
一瞬自分で作れと言われるかと思ったが案外そうでもなかった。「暑い」と一言、これまただるそうに台所へ体を引きずって行った。

がちゃんがちゃんとガラスの割れそうな音が響き、氷を削る音が聞こえてきた。電動ではなく、手回し式。うかうかしてると氷が溶けてしまうタイプだ。それなのに、なまえは作るのが上手い。不思議だった。
「はい、メロン」
「俺レモンって言った」
「あれ?そうだっけ」
その会話の間にもすでに胡座をかいて座り、しゃくしゃくと食べ始めていた。シロップの味がメロンだろうがレモンだろうが別にいいのだが、なまえの食べてるかき氷がレモンだったのがどうも腑に落ちない。
一口食べただけで頭に痛みが来た。

「あ、さっきのもハズレだったよ」


110701かき氷

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夏を三国さんとだらだら過ごすだけのシリーズ。



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