そのねこにはね、ひとをみる目があるんだよ。
「…。」
なまえはそう言ったが嘘だろう。だって、もしそうなら、俺になつかないはずがないんだから。
にゃーと間延びした声でベンチに座っているマルコとジャンルカの足にすりついて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。人懐こい?いやいや俺の半径一メートル以内に入ってこないんだ。絶対に。人懐こくなんかない。
「なんでフィディオだけ嫌われてるんだろうね?」
「口を慎めマルコ」
「いいよ本当だもん…」
一メートル離れた会話は少し寂しかった。白くて毛玉のようなねこ。本当は少し触ってみたい。アンジェロの髪もふわふわだけど、このねこはどれだけふわふわで気持ち良いだろうか。
「よーやってるね三人組」
チョコ味のジェラートを片手になまえがやって来た。すぐにマルコとジャンルカから離れ、ねこはなまえの足にすりよった。
「…なまえっていい人なの?」
「うーん?そうでもないかな」
「じゃあどうして俺にはなつかな……はっくしょい!」
「おや、風邪引いた?」
「あ」
そういえば、俺、猫アレルギーだ。
110518 猫アレルギー