※幼少期捏造
※死ネタ、グロ注意




「ちがう。けいれいは右だよサンダユウ」

今日もきまりばかりにこだわるなまえに、けいれいのれんしゅうをさせられた。やりたくない。
あいつは一番頭がいいから、クラスのみんなをいつも見渡していた。そしておくれているやつには分かるまで教えた。まじめを気取っているんだ。

「おれ左ききだもん。それに左でも右と何もかわらないよ」

「兵士のきまりは守らないとだめなんだから。ほらぴしっとしないと」

よくわからない。なぜそんなきまりを守らなければいけないのか。右のけいれいはどうしてもやりにくいのに。

「兵士はつよければいいんだと思うんだけどな」

「きまりを守らないと、つよくなんかなれないよ」

「そうかなぁ…」

でも実質、おれはきまりを守っているなまえよりつよいのだ。クラスで一番。なまえは二番。言っていることが矛盾している。

「たたかいはきまりを守れば、だれにだって負けないよ」

「ふーん…」

やっぱりよく分からなかった。


―――


はて、さて、どうしたものだろうか。昔からの親友で、真面目だったなまえが頭から血を流して倒れている。傍らには煙を上げる銃。むせかえるような鉄の臭いと火薬の臭い。
ぴしゃっと軍靴の下で血溜まりが泣いた。

「なまえ…」

返事をくれよ。いつもみたいに怒ってくれ。ちゃんと決まりも守る。敬礼だって正しくやってみせる。

『敬礼は右だ!』
『兵士の決まりを守れ!』

何故かそればかりが頭の中をリピートする。拳を喰らった痛みさえ今は欲しくてしょうがない。

「なまえ…なまえっ…!」

いくら体を揺さぶっても起きない。手が真っ赤に染まっていく。なぁ、なまえは自分から死ぬようなやつじゃなかっただろ?

どうして、どうして、どうしてどうして、君が。こんな。

「あ、…あぁああぁああああああぁ!」

なまえは死んだ。自分から死んだんだ。これが現実だ。悲しい、寂しい、虚しい。涙腺が緩んで涙が止まらない。

その日、俺は初めて人のために泣いた。




そしてなまえがいなくなった今日も誓おう、兵士の決まりを守ることを。


110407 誓い



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