今日も寝癖がぴょこぴょこと揺れている。そしてくぁあーあ…と大きな欠伸をして涙の溜まった目をこする。眠くてだるそうな、いつもの彼女のお決まりの朝の風景だ。友達ではなく、名前も知らないが、一度登校しながら強く蹴り過ぎたサッカーボールを拾って貰ったことがある。眠そうながらも「サッカー好きなんだね」と微笑んで、拾ったサッカーボールを渡してくれた。ドキリとした。その時唯一制服から年上だと分かった。
(なんか不思議な人だよなぁ…)
蹴りながら歩いていたサッカーボールを高く蹴り上げて手に収めた。
それから途中でジャンルカと合流して、サッカーやらパスタやらの話をしながら歩く。毎日自分の視界に写るのに、ジャンルカは彼女のことをあまり気にはとめていないみたいだった。俺だけなのかな、すごく気になるのは。
「ねぇジャンルカ。今時の年上の女の子って年下の男に興味ないと思う?」
「人によりだろ。…もしかして年上に恋でもしたのか」
核心を突く一言。恋か不明だけど流石ジャンルカだなぁと思った。恋愛の先輩とでも呼ぼうか。
「気になって、ちょっとドキッとしたぐらいなんだけど、これって恋なのかな」
「…さぁな」
呆れたように先輩ジャンルカが言った。なんでだろう?
これが恋だとしたら間違いなく初恋になる。今まで本気の恋というものをしたことがないのだ。中学にもなって今更なにを、と思うかも知れないが、俺は小さい頃から恋よりもサッカーとゲームとパスタに夢中だったんだ。恋に向けられるはずだった愛が全てそっちに送られていたってことだ。
サッカーボールを見詰めながら唸っているとジャンルカが単純なアドバイスをくれた。
「気になるなら行動あるのみだろ」
「…そうだよね!ジャンルカ先輩、俺先に行く!」
「はっ?」
間の抜けた声を出したジャンルカを置いて、またサッカーボールを蹴って走った。彼女までの距離が、ドキドキした。


初恋を教えて下さい!

110726



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