私が何度手を伸ばしたところで、世界は無情であった。
ルートは違えど、たどり着く結果は変わらない。いくら道を切り拓こうとも、結末だけは変わらなかった。かみさまは無慈悲だった。
アヴドゥルが死に、イギーが死に、花京院が死ぬ。DIOが負け、承太郎が勝つ。それだけが結末だった。

私の人生は、いつもこの50日間の旅をする。旅の途中はデジャヴかと思ってさして気にも留めないのだが、世界が終わる間際にいつも思い出すんだ。幾たびの50日間の記憶が何枚も個別に記録され、再生される。人生に幕が降りるとき、"今回の"記憶がディスクに刻まれ、また私は生まれる。その時、再生ハードが壊れてしまったかのようにディスクは再生出来ない。毎回心のどこかで突っ掛かりを抱えながら生きるしかなかった。

世界が何回目かに入った。
巡ってはいない。同じことを繰り返すだけの世界。

私は、また忘れるのだ。これは、何のためのディスクなのだ?忘れるなら持っていなくてもいい。いっそ、なくても当然なのだ。

「もう……もう、やめないか。かみさま……」
「何をだ?」
「付き合わされる身にもなれ。もう何度、仲間の死を味わったと思ってるんだ」

「……お前に期待しているんだ」
「期待するな」

「変えるんだ、世界を」
「変わらないさ、運命は」

「お願いだ」
「断る」

「私は……」
「私は……」


「私はお前自身なんだから」





「なにも……そんなに怖がらなくてもいいだろう……?さあ、手を取って……私のところに……」

ツゥ……と冷や汗が背中を伝う。
私は目の前にいる男を知っている。月明かりに照らされた白い肌、ふわり揺れる金色の髪、ただよう怪しい色気、暗闇に浮かぶその紅の目が、まるで麻酔のように身体を蝕む。恐ろしい、恐ろしいのに。全身が危険信号を発しているのに足は一歩たりとも動かない。逃げたいと思う心と裏腹、この人になら身を差し出してもいいとさえ思えた。
どこかでサイレンが聞こえる。赤ん坊の夜泣きが聞こえる。
飲み屋の音楽、蓄音機。いま、レコードが、終わった。あのレコード……音楽はジャズ……貞夫は空条貞夫……。
私が最後に聞いたのは、コンパクトティスクで……いいや、ディスクはこの時代にはなくて。
この時代?何を考えているんだわたしは。大事なのは『ディスク』だ。





りくおは敵から始まる7人目もあってもいいと申し述べている



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