恋愛とは常に痛いものだ。
例えば、その人を思えば胸が締め付けられるし、その人が自分以外の人と仲良くしていると胸がずきずきするだろう。初デートなんてものは緊張でお腹の具合が悪いし、喧嘩は言わずとも後悔の辛さがある。恋愛をカフェオレとして考えると、それらはコーヒーの方である。入れすぎると苦いのだ。逆に、あまりにも牛乳の割合が多いと何だか味気ない。持論に過ぎないが、カフォオレのおいしい割合が、良い恋愛の割合ではないかと思う。


◇◇◇

「ミストレに言わせればね」

隣でずーっとカフェオレを啜りながら彼女は言った。行儀がほどよく悪い。なるほどね、だからさっきいきなりインスタントコーヒーを買ってきたのだ。そしてネット上に転がっているレシピを見ながら作ったようだ。俺も手元にあるカフェオレを一口飲んだ。おいしいと言われれば美味しい、ふつうの味だ。
「サンダユウとわたしは、ちょっと苦味が足りないかなー…なーんて」
こてんと肩に頭を乗せてきた。そのままクスクスわらっている。
確かに、こいつにとっちゃ苦味なんてものは少ないだろう。俺は違う。王牙学園は男子の数が多く、女子が圧倒的に少ない。つまり、ジェラシーなんてものは、そりゃ、爆発しそうな勢いで……!おちつけ俺、カフェオレでも飲もう。……そう、多くの女子はミストレに夢中だ。そのミストレに集らない彼女は他の男子から目がつけられやすい。話す機会も多い。つまり俺はいつも遠くからはらはらしながら見守るしかないのだ。これが所謂カフェオレの苦味というやつだ。

「デートの日はぜーんぜん緊張しないし」
そういってひとつ指を折る。
「喧嘩はちょっと後ろめたい?でもなぁ本気でやるからちょっと違うかな?」
ぺたんと人差し指を折る。
それだけ苦味がないならこいつの恋愛はもはや牛乳に近いのではないか。



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