暫く前を歩いているサラリーマンに一羽黒い鳥がとまっている。カラスか何かか?周りを見渡しても誰も気付いていなくて、最初は幻覚かと思った。暫くその人の後ろを歩いていたが消えないのだ。
サラリーマンが横断歩道が赤で立ち止まる。この距離なら少し歩く速度を緩めれば、横断歩道に着く頃には青信号になっているだろう。足取りを緩めた、その時。分かりやすく言えば、ドンッ!ガシャン!と大きな音がした。
「…は?」
さっきまで目の前にあった風景はなくて。その滅茶苦茶な風景に広がる赤が妙に目立って。体が硬直して動かない。
轢かれていたのだ。さっきまでそこにいた、サラリーマンが。轢いた車は電柱にぶつかって悲惨な形になっている。誰かが走ってきて携帯電話で救急車を呼んでいた。
黒い鳥はいつの間にかいなくなっていた。


―――
隼総になる予定だった



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