Uうざい
Oおとこ
Sサンダユウ



「…。」
「なまえ、なまえ」

後ろから抱き付いてひたすら私の名前を呼ぶ男、サンダユウ。背筋がぞわぞわする。一応これでも彼氏なんだが、どうして彼氏なのかはさっぱり分からない。まぁ自分が許可してしまったんだけども。正直、うざいし、読書の邪魔だ。

「………。」
「キスしよう」
「誰がやるか」

顔もしくは腹に、思いっきり肘打ちを食らわしてやろうかと思った。でも構うとさらに絡んでくるから止めておこう。

「だから、なまえと俺とが、キス」
「そんなこと聞いてない」

あああ、もう。ぶっ飛んだこいつの頭のネジを返してくれ神様。いつもは信じてないけど今だけ信じるよ。話が噛み合わない、というかあっちがわざと噛み合わせてないのだろう。私の気を引くために、我が儘を言い出すとこうなる。

「ちゅーうー」
「わーかったわかった!一回だけね」

読んでいた本を乱暴に閉じてサンダユウに向き合った。緩みきった笑顔が目に入る。ほんと、だらしない男だ。まるでダメな男だ。そんなことを思っていたらサンダユウの薄い唇と自分の唇が重なった。…なんというか、慣れない。

「はい、おしまい」

さらに深く入り込んでこようとするサンダユウの体を押して阻止した。誰がディープにしていいなんて言った。不満そうだが駄目だ。きっと、すぐそっちの流れに持って行かれてしまう。

「なまえー…俺足りないんだけど。なまえ不足で死にそう」
「死んでしまえ」

栞が挟んである読みかけの本を開いた。ほんと、それぐらいで死ねるもんなら死んでみろ。死なないから。

「な、お願い。もう一回だけ」
「めんどくさい」

もう一回。もう一回だけ。サンダユウのもう一回は無尽蔵だ。言った通りめんどくさいのもある。すでに本を開いた読書体勢になってしまった。

「貧乳のくせに」

恐らく不機嫌そうな顔をしているサンダユウに、ぐわしっと音がしそうなほど、胸を思いっきり掴まれた。

「なっ…」

驚いてる間にぐるんと視界が回転した。押し倒されたことに気付いたのは電気が点いている天井と、サンダユウの顔が見えてからだった。

「読書なんてしてないで、俺とイイことしようぜ貧乳」
「ふざけっ、んな」

サンダユウの体を押すが今度はびくともしない。さっきのは何だったんだ。

「可愛い抵抗ありがとう。もっと襲いたくなってきた」
「ちょ…やめてよ…」
「じゃあキスしてくれるか?」
「…わ、わかったから」

何だかんだ言って、結局流されてしまうんだよなぁ…。自分の情けない意思に絶望した。



110505
―――
ごめんサンダユウ。
ぐみゅこさんリクエストありがとうございました!




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