*ミストレ視点
王牙学園にはバダップと人気を二分する女がいた。身体能力、頭脳と共にバダップに勝るとも劣らない。まぁバダップのように人をまとめるカリスマ性には欠けていたが、個人戦になると異常な強さを発揮した。そんな奴となると一匹狼でクールな女を想像するだろうが、全く違った。
「ミストレ、エスカバ、バダップ!いいところに」
普通の女だった。人をまとめるのが苦手で、人前に出ると上がってしまい上手く喋れないだけの、普通の女だ。
だから団体戦になると独壇場にしてしまう。それはもうほぼ個人戦と言っても構わないのだ。
「…ねぇ、人前で話す練習したら?」
「な、何だよ急に。俺には出来ないぞ」
更に残念な部分が一人称が『俺』。どうなってるんだ?
「んで、なんか用か?」
面倒くさがりのエスカバがざっくりと用件を聞いた。
「うん?あ、そうだった。なんか俺達狙われてるらしいよ」
「はぁ?誰に」
「殺し屋。って教官が言ってた」
こんな軽々しく言って良い言葉なのか殺し屋は。よく分からないが、俺達は強すぎるんだ。誰かに恨まれて、暗殺されてもおかしくない。と言うか教官分かっているならなんとかして欲しい。殺し屋?な表情で話すなまえ。いますぐにでも殺されるかもしれないのに焦りが全く感じられない。
「それは、危険ではないか?」
「バダップが危険なんて言葉を話すなんてびっくりだー」
その危機感のない態度がバダップの不安を煽ったのだろうな。珍しくバダップが不安そうな表情をしていた。
「大丈夫。俺が守るよ」
きっとバダップはなまえが殺されるんじゃないかと不安に思ったのだろうが、なまえはバダップ自身が不安なんだと勘違いしたらしい。「守るよ」と、犬歯を出して微笑んだその顔に何だか顔が熱くなった。エスカバもバダップも同じかな、頬を赤く染めて下を向いたり上を向いたり視線を泳がせていた。
「守るよ」なんて約束したやつはだいたい死んだり、怪我したりするフラグが立っている。なまえも例外ではない。なまえは歩いているとき俺達を庇って撃たれた。死にはしなかったが、そのまま病院で送りになった。
「ほんと、馬鹿みたい」
お見舞いに来た病院。なまえが珍しく借りてきた猫みたいに大人しくしていた。なまえが撃たれたあと泣いていた自分が情けなくなる瞬間でもある。殺し屋はバダップに見事に捕まっていた。これも活躍出来なくて情けない。
「馬鹿ってなんだよ」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いの?」
イライラして銃弾が貫通した左肩をぐっと押した。
「いだだだだごめんごめん!」
「ミストレ、怪我人だ」
バダップが俺の手をぺしっと叩いて咎めた。手が離れるとバダップを患部を緩く撫でた。手つきがエロく見えるのはきっと俺の目にフィルターがかかっているせいだ。
「けっ、庇わなきゃ怪我しなかったのによ。ほれリンゴ食え」
「ん」
「エスカバ!然り気無く『あーん』しないでよ!」
「美味い」
「知るかよ!こいつ左利きだから食いにくいと思ってやっただけだ!」
「それでは俺がやろう」
「バダップは不器用だから駄目!無理!」
「…賑やかだなぁ」
「おーいなまえ。見舞いに来てやったぞ。ありがたく思え」
「お、サンダユウいらっしゃい」
「なんだ、ずいぶん騒がしいな」
「そうなんだよ。だからちょっとそこのリンゴ食べさせてくれないか?」
「ああ、お前左利きだったな。はい、あーん」
「サンダユウと病室が一緒だなんて嬉しいなぁ」
「なまえのばかぁああ!」
男前でモテるのも考え物でした。
110708
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分かりにくいので解説。
ミストレ→ナレーション途中放棄
サンダユウ→デスブレイクにフルボッコ
なんかこの話のパターン見たことある気がする…。
ぐだぐだ文章ですいませんでした!修正いつでも受け付けます。遅くなりましたが、まめさんリクエストありがとうございました!