半田とオルフェウスより




拝啓 イナズマジャパンのみんなへ

まずは勝手にイタリアに行ってしまったことを謝ります。あまりにもばたばたしていたので連絡する暇がありませんでした。ごめんなさい。イタリア暮らしは大変ですがそれなりに慣れてきました。
そしてイナズマジャパン、アジア予選突破おめでとうございます。テレビで活躍を見ました。さらに強くなったみたいで俺も嬉しいです。
では、世界の舞台で会いましょう。戦えることを楽しみにしています。

敬具

半田真一より




「えーっ!半田ってばイナズマジャパンに手紙出しちゃったの?」

ライオコット行きの飛行機。俺の座席の隣に座っているオルフェウスマネージャー、なまえ。俺をイタリアに誘った張本人である。マネージャーにそんな権力があるとは思えないが、人を見る目はあるらしいので監督はスカウトをなまえに任せているらしい。まぁ、すごい話だ。それで今回「才能あるよ」の一言で、たまたま選ばれたのが俺だった。

「情報漏れたらどう責任取ってくれるの!…なーんちゃって、友達は大事にしないとね」

このへらへらしたのがスカウト係…信じられない。

「人の顔じっと見てどうしたの?」
「いや…なにも」
「ついに惚れた?」
「なにもって言ってるだろ!」
「うふふふふ怒る半田も可愛いね」

こつーん、と漫画なら効果音が出る感じにおでこをつつき、飛行機の窓から外の雲をを眺めた。やっぱりこの頭のおかしいやつがスカウト担当者なんて信じられない。

「あーっ!」

後ろの席に座っていたフィディオが叫ぶと飛行機内は静まりかえった。一体なんなんだ、とジャンルカらしき人の声が聞こえ、フィディオはこう呟いた。

「シンの手紙…出すの忘れちゃった」
「はぁあ?」

掲げ上げられた一枚の封筒は間違いなく俺がフィディオに託したイナズマジャパンへの手紙だった。

「ばっ、馬鹿だろお前!」
「ほんっとーにごめん!ばたばたし過ぎてポケットに入れたまま忘れてた…」
「な、な、な…」

折角書いたんだぞ!と、声を張り上げようとしたが、なまえの一言により遮られた。

「ふふふ、いいじゃないか、フィディオも反省してるし。イナズマジャパンにビックサプライズ!になるでしょ」
「お、おぉ…」

そうだ、こんな下らないことで喧嘩をして長引いたらチームの士気に関わる。このマネージャーは全て分かっているのだ。多分俺だけだろうが、優しく飄々と言っているなまえの瞳の奥が、鈍く光っているのに少し恐怖を覚えた。

「ねっフィディオ!」
「うん!」
「……二度と半田に迷惑かけないでね」
「…はっ、はい」

笑いながら怒られるのが一番怖い、と後にフィディオは語った。




「入場はキャプテンからだよ、フィディオ。転ばないでね!」
「分かってるよ!」

「あとはみんないつも通りの並びで大丈夫。…あ、半田!」
「何?」
「イナズマジャパンにビックサプライズ!だ!」

みんなの緊張を吹き飛ばすとびっきりの笑顔(マルコ談)で入場行進に送り出してくれた。

「ティ アーモ ダ インパッツィーレ!ハンダー!」

Ti amo da impazzire!
気が狂うほど君を愛してる!

聞こえてくる歓声よりも、なまえが後ろから叫んだ言葉のほうが、顔から火が出るぐらい恥ずかしかった。


110430
―――
このあとフィディオは荒れます。
もくもくさんのリクエストでした!ありがとうございました!




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