また何度か転びそうになっているなまえを支えながらの帰り道。別に転んでもいいのに、となまえは言うが、何回も転んだら手や足が血だらけになってしまうだろう。想像するだけで寒気がする。

早い話、車椅子に乗せて歩いたらいいんじゃないかと思う。

「あのね、今日の体育で…」
「怪我でもしたのか?!」
「ううん?」
「そりゃ良かった…」

なまえに怪我されたら俺が心配で心配で死んでしまう。

「で、今日の体育………、犬だ!」
「だっ、馬鹿!走るな!」

歩くときの約束そのさん、急に走り出さない、はどこに飛んで行ったんだ。
なまえは犬、猫、さらには鳥まで。道で見掛けると触りたいと走り出す。だから『そのさん』の約束をした…、が!

「なまえ!」

思いっきりすっ転んだ。しかもどうして何もない所で転べるんだ!

「いたたた…」
「大丈夫か?」

起き上がったなまえに駆け寄ると、痛そうに手を擦っていた。

「ま、まさか」

慌てて手を見ると、手のひらに見事に擦り傷が出来ている。

「今救急車呼んでやるから!」
「うん、……救急車?!」
「119…」
「今すぐ切ってぇえええ」

基本事項、軽い怪我で救急車を呼ぶのは止めましょう。


―――


おまけ

「手、消毒するぞ」

軽い擦り傷とはいえ、傷に菌が入ったら大変だ。

「痛いからやだ!」

ソファに座ったなまえは素早く手を後ろに引っ込めた。毎回怪我をするくせに、消毒だけは本当に嫌がった。困ったちゃんだ。

「唾付けて治すのと消毒どっちがいい?」
「消毒のが嫌!」

ずい、となまえの顔に近付いた。

「…無理矢理突っ込まれるのと消毒どっちがいい?」
「……消毒です」
「よろしい」


終わり。

まえつぎ




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