眉目秀麗、頭脳明晰。俺を表現するのにぴったりな言葉だ。あと万能もかな。ナルシスト?そうだね、俺はナルシストだ。この世の中、俺より頭脳も容姿も優れているやつなんてそうそう居ないだろう?これじゃ自分自身を好きになっても仕方がないでしょ。美少年美少年と、女の子たちにもてはやされるのも嫌いじゃないし。周りの男が羨ましそうにこちらを眺めているのを見ると、可笑しくてたまらないからね。もちろん試験会場でも同じくきゃあきゃあ騒がれていた。ああ、実に愉快だ。試験会場の女の子全員、俺に釘付け。嫉妬に狂う男共、……ん?
試験だというのに、服装を正していない男女がいた。もちろん女の子は俺の方を見ている。

「なまえ、何見てるんだ?」
「……へんなかみ」

指差し。その先は間違いなく俺を差している。しかも笑いもせず無表情で真剣に言っているのだ。

「馬鹿、今から喧嘩売るな」と、隣のタヌキのようなフェイスペイントをした男が女の子の指をぺしりと叩いた。まぁいいさ。今にあの子は俺に惚れるんだから。
おっと、丁度良くいいカモがいた。

「君も髪伸ばしてるんだね。これあげるから結べば?」
「あ、ありがとう」

これで好感度はぐっと…。
…好感度が上がったのは元々周りにいた取り巻きだけで、既にあいつらは居なかった。ここまで俺に興味を持たない人間は初めてだった。
そう言えばあいつら、噂に聞いていた情報の人物に似ている。男女一組の喧嘩っ早い不良の要注意人物。それと、もう一人居たような気がする。でも、誰が相手だろうと顔だけには傷は付けさせない。美少年台無しとか有り得ない。

13グループ内一位ミストレーネ・カルス。運が強いのか、それほど強い奴とは当たらなかった。傷は付かなかったから十分だが、すぐ終わってしまって少しつまらなかった。そう思ってる人間は俺だけではないだろう。激戦を繰り広げている1グループのモニターを真剣に見つめているのは、さっきの不良タヌキと、白髪の男。他にも終わってきたやつはいるが、疲労困憊、といった様子で立ってモニターを見る気にもなれないらしい。1グループ、サンダユウ・ミシマと、不良の片割れ、なまえの戦い。サンダユウ・ミシマ…って良く見たらさっき俺がカモに使った冴えない男じゃないか。人は見掛けによらないんだな。

「あっ」

女の子に一発銃弾が当たってしまった。しかし、サンダユウもよく見ている。あのスピードに当てた。もう女の子は負けるだろうなと思ったが、案外そうでもなかった。髪を犠牲にして腹に拳を叩き込んだ。にやりと隣で不良タヌキが笑ったような気配がした。しかしサンダユウはあれほどの威力の突きを喰らっても倒れなかった。「防具か…」という呟きと共に、ぎりりと歯ぎしりが聞こえた。結果なまえの負け。女の子にしてはよく頑張ったほうじゃないかな。と言うかむしろすごいんじゃないかなこれ…。
この時既に俺はなまえに惚れていたのかもしれない。他の女の子とは違って、強くて、騒ぎ立てるようなこともせず、ただ思ったことを言うだけ。
それだけなのに。


110701
―――

まえつぎ




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