*少年少女が出てきます。
「かんとくー結婚おめでとー!」
「わ、わ、ありがとう!」
子供達から渡された花束を慌ただしく受け取って微笑んだ。
なまえは地域の小学生以下のサッカーチームの監督として働き、結婚したばかりの今でも子供達のために休めないと週に一度の練習に出向いた。
円堂守との戦いからすっかりサッカーに対する憎しみは消え、純粋に楽しめる、そんな時代が到来していた。昔はなまえもゴールキーパーとして試合に出場したことがある。そこで学んだ選手の動き。それにどう対応すればよいのかなどなまえの指導能力はそこそこあった。…監督がしっかりしていないから選手が頑張らなければという気持ちになっているように、俺には見える。
「ねぇねぇサンダユウおじさん」
「おじっ…」
「ぷっ」
おじさんじゃない!お兄さんだ!と言いたいところだが、相手は年端も行かない女の子だ。気持ちを落ち着かせなければ。必死に笑いを堪えているなまえにはあとできついお仕置きを加えることにしよう。
「な、なんだ?」
「わたしね、監督がプロポーズされてるところみたい!」
「はっ?」
ロマンチストなのか、ませている。大いにませているぞ少女よ。何であれ、まさかあれの再現なんか出来ない。
「えーあー、うーん…」
「ほら、サンダユウおじさん。子供のお願いぐらい聞いてあげないとぷくく…」
まだ必死に笑いを堪えていた。今にも大爆笑しそうだ。いいさ、こうなったらやってやる。
「…なまえ」
「ふぁい?」
「俺と、結婚してくれ」
なまえの左手を取り、薬指に軽くキス。酒に酔った勢いとは違う、真面目な二回目のプロポーズ。なまえのにやけ顔がみるみる赤くなっていくのが分かった。
「ばっ…!も、もういいから練習しようねー!はい!」
ばっと手を振り払いフィールドに走って行った。その後をわいわいとついていく子供達が微笑ましかった。
「サンダユウおじさんもいっしょにやろう!」
「おじさんじゃなーい!」
やっぱりまだお兄さんと呼ばれたいです。
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まえ|つぎ