「おはようございますデスブレイクです」
頭が痛い。
「昨日が結婚式、なんで今日また来たデスブレイク」
ただいま午前九時。
取り合えず部屋に招き入れた三人に事情を聞いた。
「君らの新婚ラブラブを打ち壊しに来たに決まってるでしょ!」
「祝い足りなかった」
「ミストレとエスカバが…」
「理由ばらばら…」
さぁ、晴れて新婚生活だ!と思った矢先にこれか。まぁ新婚旅行に行くわけでもないし、別に構わないのだが…もう少し配慮と言うものを考えて欲しかった。二人の時間を増やすために仕事も休みを貰ったのに。
「ねー、なまえってばまだ寝てるの?」
「そろそろ起こそうと思ったんだが…疲れてるみたいだしな」
「じゃあ寝起きドッキリしよう!この前テレビで見たんだ!」
意気揚々と寝室に向かうミストレ。(何故場所を熟知しているんだ)肩を掴んで引き留めたが、何故かドアが開いた。
「あー…ベッドから落ちたー…ん?」
「なまえっ!」
ゆらゆらと起きてきたなまえにミストレが間髪入れず抱き付いた。いくらなんでも人妻だぞ人妻!
引き剥がそうとするがなかなか離れない。しかもなまえがミストレの背中をぽんぽんと叩いている。きっとミストレの抱擁を挨拶程度としか思っていないのだろう。
「エスカ!バダップも!」
「あっ」
自然と離れたなまえにミストレは不満そうだ。
「ようなまえ。お前昨日とは偉い違いだな」
「エスカひどい…」
「ほら、お話はいいからちゃっちゃと着替えるぞ」
きっと昨日のめかした姿とはギャップがありすぎだったのだろう。パジャマ姿のままだったなまえをタンスのある寝室に送り返して、ついて行こうとするミストレはソファに引き戻した。
「…一人で着替えられるのか」
「それぐらいならなんとか」
ぽつりと呟いたバダップの質問。その辺の基本的生活の動作は、正直言って長年の教育の賜物だ。そして、寝室のほうでガゴンと音がしたのはきっと気のせいだ。ばたばたと着替え終わったなまえはぺたんと俺の隣に座った。
「ところで何しに来たの?」
話は振り出しに戻る。
結局夜に酒を持ってまた来ると言うことで落ち着いた。
「あーやっと二人きり…」
なまえを後ろから抱き締めて溜め息をついた。
「急に甘えてきてどうしたの?」
「…流石にあいつらが来たら何も出来ないだろ。だから今取り返してる」
「ふふ、そんなことしなくても時間はいっぱいあるよ。せっかちだなぁサンダユウは」
「そうか…そうだよな…」
ゆったりとした時の流れと暖かい空気を感じる。尖ったものなど何一つない。俺には無いものを持っている。これだから俺はなまえに惚れているのだ。
もとい、愛しています。
―――
おまけ
「サンダユウ!酒!」
一番酒豪のエスカバがとびきりの笑顔で開口一番そう言った。
「おー来たなデスブレイク」
思い思いの酒を購入してきてまた夜にやって来たデスブレイク。朝と同じように招き入れた。
「お酒かぁ…」
「なまえってお酒飲んだことないの?」
白ワインのボトルを大事そうに持ったミストレがそう聞いた。
「付き合いでちょっとはあるんだけどさ…どうにも悪酔いしちゃって」
「じゃあ白ワイン飲んでようよ。度数低いし大丈夫!」
「サンダユウー…ちゅーしよ…」
これのどこが大丈夫なんですかミストレさん。今はもう酔いつぶれてるから聞いちゃいないけど。
赤く染まった顔に緩みきった笑顔を崩さないなまえは異常にキスを求めてきた。
「人格変わりすぎだ…」
「俺だってそう思うよ…」
抱きついてくるなまえをあしらいながら、バダップのグラスにビールを注いだ。
「いいよもう…結婚なんか破棄してやるよ…」
無視し過ぎが祟り、むくれてそんなことを言い出した。
「ちょっと待てなまえ…」
「ちゅー…」
「分かった分かった」
一度頬にキスをすると嬉しそうに目尻を下げてふにゃりと笑った。
「…なぁバダップ…新婚ってこんなんだっけ」
「特殊な一例だ」
おわり。
まえ|つぎ